以下は、神戸女学院大学図書館ニューズレター「Veritas」 №40 (2009年3月17日)に掲載されたものです。
特集テーマは「本の旅路」でした。
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「いいよなあ 旅」
講演仕事で、あちこち出かけることが多くなり、今年に入ってからも岩手、岐阜、島根、埼玉などといったところへ出かけています。
しかし、残念ながら、いずれも「旅」の楽しさを感じさせるものではありません。行って、講演をして、帰ってくる。ただそれだけの「移動」の時間といった感じです。
加えて、岩手や島根は往復飛行機で、交通時間も実に短いものとなっています。電車や飛行機で本を読んではいるものの、自宅から大学に通う電車でのそれと何も実感はかわりません。
それでも2年ほど前までならば、行く先々の土地に関する本を読んで行こうと思える心のゆとりがありました。山川出版社から出ている『県史』(全47巻)をしばらく読んでいたのもその頃です。
北は『北海道の歴史』(田端・船津・桑原・関口、2000年)から南は『沖縄の歴史』(安里・高良・田名・豊見山・真栄平、2004年)まで、行き先に応じてその土地の本を手にして出かけました。
原始・古代から現代まで、地域の通史が要領よくまとめられており、地理や文化や産業、政治や他の地域との交流の様子なども良く見えます。旅先を歩く時に「自分はこういう歴史の上を歩いているんだな」と、なんだか少しテンションが高くなることもありました。
何年かつづけて家族でインドネシアのバリ島へ行っていたこともありましたが、その時にも、関係する地理や歴史の本をいくつか読んで行きました。
覚えているのは、村井・佐伯『インドネシアを知るための50章』(明石書店、2004年)や歴史教育者協議会『シリーズ知っておきたい東南アジアⅠ・Ⅱ』(青木書店、2004年)などです。ただし、こちらは実際の歴史の複雑さに、アタマの整理がついていきませんでした。付け焼き刃の限界ということだったのでしょう。
韓国へは2004年から毎年ゼミで行っていますが、こちらは完全に仕事です。
ゼミは「慰安婦」問題をテーマにしており、学びの中には、韓国の近現代史や日本と朝鮮半島と交流の歴史などもふくまれます。
長い歴史をザッとながめるには三橋広夫『これならわかる韓国・朝鮮の歴史Q&A』(大月書店、2002年)が便利ですし、最近の政治の急速な変化の内実を知るには面川誠『変わる韓国』(新日本出版社、2004年)が面白いです。
どちらを読んでも「こんなに近い国なのに、知らないことが多いなあ」と思わされます。
どうも、どこまで書いても、あまり旅らしい旅の本は出てきそうもありません。旅先で眠る前には、椎名誠、東海林さだおのオモシロ本や、小池真理子のホラー小説なんかも読んだりしてはいるのですが。
学生たちの大学からの「旅立ち」といった言葉に無理やりひっかけることで、そろそろ終わりにしたいと思います。
この3月に『輝いてはたらきたいアナタへ』(冬弓舎、2009年)を、総合文化学科叢書の一冊として出版します。08年3月に卒業したゼミ生たちと一緒につくったもので、メインとなるのは、すでに社会ではたらいている若い先輩たちの体験です。
4月から就職するみなさんにも、これから就職を考えるみなさんにも、大いに参考になるものと思います。ぜひページをめくってみてください。
最後は自分たちの本の宣伝で終わってしまいました。まあ、そういうこともあるわけです。はい、では、おしまいです。
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