日本共産党「しんぶん赤旗」2006年4月2日付掲載
書評・不破哲三『21世紀の世界と社会主義』
世界にはたらきかける理論の力――綱領路線の新たな検証
2005年12月上旬、日中両共産党の理論会談が東京で行われた。
中国側が日本側に質問を届け,その回答を聞きに日本へ代表団を送ってきたというのも驚きであれば、日本側が4日間の時間をかけてこれに全力で応答したというのも驚きであり、さらに「中国的特色のある社会主義」に対する率直な問題提起も含まれた回答に,中国側が最上級の感謝の言葉を残して帰ったというのも驚きである。
その様子は同月末に,日本側の団長であった不破哲三氏によって公開されたが,本書はそれを整理したものである。
中国側からの会談の呼びかけは,04年に開始された同党の「マルクス主義理論の研究と建設のプロジェクト」の一環である。
それは世界の社会主義的な知恵のすべてを研究しながら,中国における社会主義への道を,あらためて根底から探究しようとする志の大きな取り組みである。とはいえ,これほどまでに全面的な会談は今回の日本共産党とのものが初めてだという。
日本側は寄せられた9つの質問を,①現代の世界をどう見るか,②社会主義運動とマルクス主義,③現代の社会主義,④日本の情勢という4つのグループに分けて回答している。
回答にあたって威力を発揮したのは,日本共産党綱領の豊かな理論の蓄積である。
新しい世界構造,資本主義の「自己調整能力」,体制間競争の新段階,ソ連社会と覇権主義,なぜマルクスの理論を重視するか等が,中国側の今日的な理論動向も踏まえて語られていく。
圧巻は,二段階論の誤りを克服した社会主義・共産主義論の解説と,これにもとづく「『中国的特色のある社会主義』への6つの問題提起」である。
不破氏が「わが党の綱領路線にはこんな角度も含まれていたのかと,私自身が新たな“発見”をする」と語ったことの多くは,おそらくここに集中している。
中国国民の社会主義への自覚は十分か,世界銀行が絶賛した貧困の解消は社会主義的志向の成果ととらえられているか,「生産者が主人公」という経営形態への接近は萌芽的にでも始まっているのか等,問題提起はあくまで原則的で骨太く,それゆえに大胆率直なものとなっている。
不破氏は会談後のあいさつで,若い中国代表団に,理論と実践の両面で問題を追求する真剣さ,変化する現実への鋭い感受性,それを理論的にとらえようとする発展性が感じられたと述べている。
また巻末におさめられた中国『当代世界』誌のインタビューには「マルクス主義者の任務は,新しい情勢に適応し,新たな事態に対応して,新たな創造を切り開いてゆくように努力することにある」と述べている。
それらの資質と姿勢の重要性は,もちろん中国のマルクス主義者だけにとってのことではない。
本書は現代世界と社会主義への新たな切り口からの解明であり,世界にはたらきかける綱領路線の力を強く示したものである。それは何よりも先ず,日本のマルクス主義者等によってこそ,十分に読み込まれるべき著作であろう。
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