「刺した」を「突き殺した」と誤訳したうえで、だから、殺された本人が生きているわけはないと、南京大虐殺被害者をニセモノ呼ばわりしたことへの判決。
「学問研究の成果に値しない」という判決は厳しく、的確なものである。
「控訴する」という東中野氏は、一体何を楯にたたかうつもりなのだろう。
「南京大虐殺」本の名誉棄損訴訟で著者らに賠償命令(読売新聞、11月2日)
「南京大虐殺」を巡る本で名誉を傷つけられたとして中国人女性の夏淑琴さん(78)が、著者の東中野修道・亜細亜大教授と発行元の「展転社」に計1500万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が2日、東京地裁であった。三代川三千代裁判長は名誉棄損を認め計400万円の賠償を命じた。
問題となったのは、1998年に出版された「『南京虐殺』の徹底検証」。判決などによると、夏さんは、南京大虐殺について記した当時の英文資料などに登場する「家族を殺され、生き残った8歳の少女」として、中国や日本で体験を語ってきたが、同書は「8歳の少女と夏淑琴とは別人」などと記していた。
判決は「著者による資料の解釈は妥当とは言い難く、学問研究の成果というに値しない」と批判。夏さんを「8歳の少女」と認定し、「原告が虚偽の証言をしていると強く印象づけ、名誉を傷つけた」と述べた。
東中野教授の話「非常に心外で、控訴する」
南京大虐殺生存者が勝訴 東京地裁 “ニセ被害者”は名誉棄損(しんぶん赤旗、11月3日)
日中戦争中の一九三七年に日本軍が起こした南京大虐殺で生き延びた中国人女性が、ニセ被害者と決めつけられ、名誉を傷つけられたと訴えている問題で、東京地裁(三代川三千代裁判長)は二日、「原告の名誉を棄損し、名誉感情を著しく侵害」したとして、被告に四百万円の支払いを命じました。
訴えていたのは当時、家族七人を殺され、自身も銃剣で刺された夏淑琴さん(78)。夏さんを「南京大虐殺のニセ証言者」とした東中野修道・亜細亜大学教授と出版社の展転社(東京都)に千五百万円の損害賠償などを求めていました。
東中野教授は著書『「南京虐殺」の徹底検証』のなかで、「銃剣で刺した」と訳すべき英語を「銃剣で突き殺した」と誤訳。“夏淑琴さんにあたる八歳の少女は殺されて存在しないはず”と主張していました。
判決は、普通の読者であれば、夏さんが虚偽の証言をしていると理解するであろうとの見方を示し、「原告はいわゆる南京事件の生存被害者として広く知られた人物であるから、(著書の記述は)原告の名誉を棄損するものであり、原告の名誉感情を著しく侵害する」と判断しました。
英語の誤訳について、「解釈はおよそ妥当なものとはいえず、学問研究の成果に値しない」と批判しました。
記者会見で原告側弁護団は「(南京大虐殺の)否定派の代表的な論客である東中野氏に対し、裁判所が断を下したといえる」と評価しました。
“歴史の事実語る” 原告
「やったー」「学者の研究態度のあり方に踏み込む画期的な判決だ」―。二日、南京大虐殺・夏さん名誉棄損裁判判決で、原告団「勝訴」の旗が掲げられた東京地裁門前は、約六十人の支援者の歓声に包まれました。
その場で急きょ行われた報告会では、「南京への道・史実を守る会」の会員は「ほぼ全面勝利の内容です。うれしい。感無量です。少しでも(歴史の事実を)埋め合わせることができました。支援する人の苦労が報われた感じです」と、判決への確信を語りました。
判決後の記者会見で、原告の夏淑琴さんは「来月は事件が起きてから七十年。本当に私にとって記念すべき年になりました。なくなった身内や家族に、このうれしい知らせを伝えたい」と喜びを語りました。一方で「これからも歴史の事実を語り続けなければならない」と、法廷で被告の東中野修道亜細亜大学教授と、一回も対決できなかったことに無念さをにじませました。
南京事件70年 勝訴受け集会 史実は勝つ 原告・夏さんら 改ざん許さない(しんぶん赤旗、11月4日)
南京大虐殺の被害者で前日の東京地裁で名誉棄損の勝訴判決を勝ち取った原告の夏淑琴(かしゅくきん)さん(78)を迎え、「南京事件から七十年―史実は勝つ!」と題した集会が三日、東京都江東区で開かれました。約五十人の参加者はこれまでの運動を確信にし、歴史の改ざんを許さない決意を新たにしました。主催は「南京への道・史実を守る会」。
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日本軍による南京大虐殺で家族七人が殺された夏さんは「ずっと悲しみを背負ってきた」と話しました。被告の東中野修道・亜細亜大学教授の著書のなかで、ニセ被害者とされたことを知ったときは、あまり気にしなかったといいます。しかし、「死んだ家族を思い出すと怒りを禁じえなかった。私は自分の口で多くの人に体験を伝えようと思った」とのべました。
夏さんは「(裁判で)残念だったことは私をひぼう・中傷してきた東中野氏に最後まで会えなかったことだ」と繰り返し語り、出廷しなかった同氏を批判しました。最後に「これからは戦争のない世界を求めたい。日中友好であることが私の願いです」とのべました。
中国の談臻(だんしん)弁護士は「日本の右翼は歴史を改ざんし続け、いつか葬ることができると思っているかもしれない。しかし、それは日本の民衆を葬ることになる」とのべ、「歴史にきちんと直面し、清算することは日本の利益にかなうことだと信じる」と語りました。
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