以下は、日本母親大会連絡会「母親しんぶん」第575号(2007年7月15日)に掲載されたものです。
講師としての自己紹介的な文章をとのご依頼でした。
見出しはいずれも、同紙編集部によるものです。
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講師紹介 第53回日本母親大会問題別集会
ほんとうに男女平等? いまの日本
--だれもが自分らしく生き・働ける社会を--
こんにちは。兵庫県西宮市の神戸女学院大学で、経済学を教えている石川康宏です。8月の日本母親大会で「安倍首相が描く『美しい日本』と女性」というテーマで、お話をさせていただきます。よろしくお願いします。
私は、1957年に北海道で生まれ、高校時代までを札幌ですごしました。北海道にはアイヌ語に漢字を当てはめた地名が多いのですが、私の通った月寒(つきさむ)高校も、もとは「ツキサップ」(月の見える丘)というアイヌ語から来たものでした。
大学は、京都の立命館大学です。とはいえ、授業に出席した記憶はほとんどありません。「学生運動のために大学に毎日泊り込んでいる」といった生活でした。ここでがんばりすぎてからだを壊し、一度大学を中退して、その後、京都大学の大学院に進んだのは、30才に近くなってからのことでした。
大学院では日本経済史についてのゼミに所属し、1980年代の日米鉄鋼産業についての論文を書きました。しかし、同時にマルクスやグラムシなど、資本主義社会の改革をめざす、たくさんの学問と思想を学ぶ時間がもてたのは幸いでした。
はじめて「ジェンダー問題」を考える
1995年、阪神淡路大震災の年に、ようやく神戸女学院大学に職を得ます。この大学も震災の大きなダメージを受けており、赴任から1年半はプレハブの研究室ですごしました。女子大で経済学を論ずる経験から、はじめて「ジェンダー」問題を考えるようになりました。
ジェンダーというのは、男女の社会的な関係のことです。きっかけは就職差別など今日の企業社会の問題でしたが、そこから次第に、江戸時代は、平安時代はなどと、歴史の大きな視野に男女関係の変化をとらえていく必要を感ずるようになりました。実際、学んでみると、親子も夫婦も家族も、具体的な姿は歴史的にどんどん変わっています。
衝撃的な出会い
2004年には「慰安婦」問題との衝撃的な出会いがあります。なかば偶然の出会いでしたが、以後、毎年のゼミで学生たちと韓国の「ナヌムの家」(日本軍「慰安婦」歴史館があり、かつての被害者10名ほどが暮らしている施設)を訪れるなど、執念深く、これについての学びと教育をつづけています。
ふりかえってみて、われながらいろんな問題に手を出しているなと思います。しかし、考えてみれば、出発点にあった経済学も、哲学や歴史理論をふくんではじめて成り立っているものです。ですから、新しい問題の学びは、人間社会に対する私なりの理解を雪だるま式にふくらませてくれるというのが実感です。
講演内容は、参議院選挙の結果をふまえて
8月に「安倍首相が描く『美しい国』と女性」などというテーマで、「経済学者」である私が話す機会を与えられるのも、この「雪だるま式学習研究法」の成果です。講演のこまかい内容は、参議院選挙の結果をふまえて考えたいと思います。政局は流動的ですから、「自民党大敗」「安倍首相退陣」といった結果も、大いにありそうな話です。その時には、講演のテーマ自体も変わります。
著書の紹介
最後に、私の最近の本を紹介しておきます。①編著『「慰安婦」と心はひとつ 女子大生はたたかう』(2007年、かもがわ出版)、②『いまこそ、憲法どおりの日本をつくろう!』(2007年、日本機関紙出版センター)、③編著『「慰安婦」と出会った女子大生たち』(2006年、新日本出版社)、④共著『ジェンダーと史的唯物論』(2005年、学習の友社)、⑤編著『ハルモニからの宿題』(2005年、冬弓舎)、⑥共著『軍事大国化と「構造改革」』(2004年、学習の友社)、⑦『現代を探究する経済学――「構造改革」、ジェンダー』(2004年、新日本出版社)等。どこかで手にとって見てください。
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