「インタビュー結党50年の自民党 総選挙で『純化』というが」
神戸女学院大学・石川康宏
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総選挙をつうじた自民党の「純化」が言われています。小泉首相にたてついた人は,公認をはずされ,「刺客」をぶつけられ、当選しても制裁です。その結果、旧橋本派や亀井派など,有力といわれた派閥が機能を弱めています。自民党の中央集権化が強まっているのでしょう。
米国の要求へ屈伏
しかし,ここで肝心なことは「純化」の基準が何だったかです。それは郵政民営化にイエスかノーかでした。郵政民営化は、日米の金融関連資本に新たなもうけ口を与えるものです。つまり自民党は,日米大企業の利益拡大にいっそう奉仕する方向へと「純化」したのです。民営化案は日米合作ですから,アメリカの要求への屈伏の深まりも指摘できます。マスコミの「純化」論は,こうした政治の中身にあまり注意がとどいていません。
小泉自民党による「構造改革」の背景には,土建国家型から、トヨタなど多国籍企業主導型への,財界の要求の変化があるという指摘があります。八〇年代後半からの公共事業費急拡大で,財政赤字がふくらみ,土建国家的やり方がゆきづまったのは確かです。
しかし,そこから一挙に土建国家の清算が進んでいるわけではありません。「構造改革」には,土建国家の一定の継承が織り込まれています。選挙後の政府に対する日本経団連の要望書にも、首都環状線の整備や羽田・成田の空港拡張がちゃんと入っていました。「都市再生」の名目で、多少の「お色直し」はされていますが,従来型の大型工事がバッサリ削られるということはないのです。そして,それによる財政赤字が,社会保障削減や庶民増税の原動力となっています。ですから,公共事業費が社会保障費の倍もある“「逆立ち財政」を正せ”というのは、「構造改革」批判のスローガンとして引き続き重要です。
他方で,財界が要求する大企業減税や労働条件切り下げなどの規制緩和は、多国籍化のすすんだ製造業だけでなく,土建や鉄鋼も含め、すべての大企業の利益となっています。それは日本に進出してくるアメリカ企業にとっても同じです。こうした内実をもつ「構造改革」を日本企業の多国籍化だけで説明することはできません。私は,特に小泉・竹中「構造改革」が,アメリカへの屈伏の度合いをますます深めるのではないかと懸念しています。
「通信簿」と献金で
財界は「構造改革」に大胆さとスピードを求めました。そのためには自民党から,地方や業界などの利益代表の集まりという性質をはぎ取る必要がありました。トップダウンで動く,統一的な組織にしたかったのです。試みの最初は,中曽根内閣の「審議会政治」づくりあたりかも知れません。その後,小選挙区制をテコに自民党の集権化がすすめられます。政党通信簿やそれにもとづく利益誘導(献金)も行なわれます。また政府には経済財政諮問会議がつくられ,2人の財界人が入りました。こうして財界直結の政治は,自民党と政府の両方の改革ですすめられます。
結局,自民党政治は,ますます少数者だけに奉仕する性格を強めています。大胆でスピードのある改革は,それだけ多くの市民との対立をすばやく深めるものとなるでしょう。それが小選挙区制マジックで大勝した自民党政治の,今後の最大の弱みとなります。
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