以下は、「兵庫民報」2008年2月17日(2181号)に掲載されたものです。
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『これが人間らしい働き方のルール--日本共産党の立法提案』を読む①
人を人として扱うことがなぜできないのか
書名のとおり『これが人間らしい働き方のルール』を示すこの本は、現状の解釈ではなく、打開の道筋を示す労作です。
副題は「日本共産党の立法提案」となっており、最低賃金、解雇規制、「企業再編」による労働条件切り下げ、均等待遇、男女平等、公務員の労働基本権回復など、07年に発表された最新の雇用政策もふくめ、これまで同党が積極的に行ってきた提案やその要綱がおさめられています(第Ⅲ・Ⅳ部)。
労働法制改悪阻止闘争本部長である市田忠義さんのインタビュー(第Ⅰ部)や、当時委員長だった不破哲三さんの報告「労働基準法を考える(1)(2)」(第Ⅱ部)が、全体を読みやすいものにしています。
大学の授業で学生たちとNHKスペシャル「ワーキングプアⅠ・Ⅱ(総集編)」と「ワーキングプアⅢ」を見ました。経済的には恵まれた階層に属する学生たちですが、食い入るように見つめています。
あまりの生活苦と政治や社会の無策に驚きが隠せません。その貧困の根底にあるのは、何より雇用の破壊であり、多くが就職していく学生たちも、この過酷な雇用制度から自由ではありえません。
『蟹工船』(小林多喜二)が何種類かのマンガになっていますが、これを「オレたちのことが書いてある」という若者もいるそうです。
『蟹工船』で多喜二が告発したのは、海面に「うさぎが飛ぶ」荒波と厳寒の北オホーツクで、帝国軍隊と結託した巨大な水産資本の犠牲となって、いとも簡単に命をも奪われてしまう文字通りの奴隷労働です。
それを「オレたちのこと」と受け止めずにおれないほどに、今の日本には非人間的な労働が拡がっている。
読み終えて、真っ先に考えさせられたのは「人を人として扱う」当たり前の政策が多数の合意にならない日本の国会の異常さです。
そして労働力人口の8割が労働者でありながら、そのような国会議員を選んでしまう国民の判断力の問題です。改革の鍵は何よりここにあるのでしょう。必要なのは政治を見る国民の視線を鍛えていくことです。
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