以下は、新日本婦人の会「新婦人しんぶん」2010年7月8日、第2849号、5面に掲載されたものです。
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第4回 男女平等の実現は現代の重要課題
-エンゲルス以後の新しい探究-
『はじめてのジェンダー・スタディーズ』は、大学1年生にも読めることをめざした入門書でしたが、これをつくる過程で、私には、もう少し突っ込んで考えてみたい問題が生まれていました。
それが論文「マルクス主義とフェミニズム」(2003年5月)につながります。副題は「フェミニズムの問題提起を受けとめて」でした。
この論文の根底には、フェミニズムが提起するさまざまな問題に積極的な回答を示すことが、男女平等に向けて、互いの力をあわせる道をひらく——そういう実践的な問題意識がありました。それはジェンダー研究会でのフェミニストとの実際の交流にもとづくものでもありました。
フェミニズムの一部には、科学的社会主義が十分注目してこなかった問題への鋭い着目が含まれます。しかし、それを社会全体に位置づける理論には案外整理の届かぬところがあり、そこは社会の構造分析を得意とする科学的社会主義が、積極的に引き受けるべきだと考えました。
ただし、そのためには科学的社会主義の側にも、新しい発展が必要です。科学的社会主義の「家族・男女」論といえば、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』(1884年)が有名ですが、それは男女平等の実現にむけた先駆的な解明をふくむ一方で、平等の達成を共産主義社会に求める「古さ」をもっていたからです。
エンゲルス亡き後の人間社会の発展は、男女平等の実現を、人類の多くが資本主義に生きる現代の重要課題としてきましたから、これを21世紀の現代に、そのまま繰り返すわけにはいきません。
こうして「女性解放」論の現代的発展に取り組むことは——「マルクス主義は男女平等を共産主義に先のばしする」——という一部のフェミニストによる科学的社会主義への批判に答え、「対話」のパイプを太くするものともなるはずです。
今ふりかえってみれば、たいへん粗削りな論文でしたが、こうした問題意識の共有をよびかけたところに、多少の社会的意義があったかと思います。
これをふくめて、これまでの連載で紹介してきた私の主な書き物は、2004年に出版した『現代を探求する経済学』(新日本出版社)におさめてあります。ここに紹介できない論点も含まれますので、どこかでながめてみてください。
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