以下は、「しんぶん赤旗」2010年9月5日付、第6面に掲載されたものです。
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成熟した革命論の集成
現代に挑む力 育てるために
不破哲三編集・文献解説
■マルクス『インタナショナル』 ■エンゲルス『多数者革命』
この2冊の本は、科学的社会主義の主に革命論の領域に属しています。「主に」というのは、科学的社会主義の理論が、そもそもいくつかの構成要素に縦割りで分割できるようなものではないからです。
革命論の実践的な探究の中で、経済理論、世界観、未来社会論の深化に向けた新しい着想が生み出され、それらのまとまった理論的探究の成果が革命論にはねかえってくる、科学的社会主義の理論は、そのような全体の一体性を重要な特徴としており、この二冊はその実際の姿を具体的に教えるものにもなっています。
~~~~科学的社会主義が何より変革の理論であるにもかかわらず、マルクス、エンゲルスの革命論は、これまでの研究が相対的におくれた分野となっていました。そこには、マルクス等を19世紀までで賞味期限が切れた理論家だとしたスターリンの悪影響があり、くわえてマルクス等によってまとめられたこの分野の教科書的な著作がないこと、また発言・執筆ごとの理論的発展が格別に急速な分野となっているなどの理由がありました。
そうした事情の中で『マルクス、エンゲルス 革命論研究』上下(新日本出版社、2010年)という、先駆的な大著を著したばかりの不破哲三氏が、その研究の到達にもとづいてマルクス等の著作や発言をまとめたのがこの2冊です。
不破氏は、2冊のテーマにそって2人の重要な文献を年代順に配列し、その文献ごとに短い解説をくわえ、さらに文献末尾にはそれぞれへの理解を深める周到な注をそえています。
『インタナショナル』には「国際労働者協会創立宣言」(一八六四年)から「ジョージ・ハウエル君の国際労働者協会の歴史」(七八年)までの二五編が収められ、『多数者革命』には「プロイセンの軍事問題とドイツ労働者党」(六五年)の一部から「マルクス『フランスにおける階級闘争』への一八九五年版への序文」(九五年)までの一九編が収められました。前者にはマルクス、後者にはエンゲルスが圧倒的比重を占めることから、表題の著者名はそれぞれ一人ずつとされています。
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これらの出版により、後年のマルクス、エンゲルスによる、主としてヨーロッパを舞台に成熟させられた革命論の系統的な学習が、きわめて容易になりました。同時に、それは一層の旺盛な研究を呼びかけるものともなっています。
読者のみなさんの中には、21世紀になる今日、なぜ19世紀の古い古典を読み、研究する必要があるのかと疑問に思われる方もあるかもしれません。その種の問いに対して私は、こう答えることにしています。
当時の現実に立ち向かったマルクスとエンゲルの真剣な姿勢と分析の深刻さを肌で学び、21世紀の現実世界に立ち向かう自立した精神と変革者としての気概、あわせて現実を分析させる理論的な導きの糸を得ること、そこにこそ古典を学ぶ重要な意義があると。
現代の政治改革の前進に向け、自身の力を育てることを切実に希求するみなさんに、この2冊の本を心からお勧めします。
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