以下は、新日本婦人の会「新婦人しんぶん」2011年1月20日、第2874号、第5面に掲載されたものです。
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第10回・男は長時間労働 女は家庭とパート-経済界の家庭管理戦略
今回は「長時間労働・女性差別とマルクスのジェンダー分析」という論文の紹介です。『前衛』(日本共産党 2007年3月号)に発表したものです。
家事労働に対する支払いは
そこで私は、マルクスの経済学が分析する「市民社会」には、もともと家族が含まれていた。『資本論』は夫だけでなく、妻や子どもがはたらく共働き家族の搾取を取り上げている。「家庭」は労働力の維持・再生産を果たす大切な場として位置づけられている、等のことを書きました。
そして、次に、専業主婦のいる家族を念頭して「家事労働への支払い」という問題に挑戦してみました。
①主婦の家事労働は、夫の労働力を維持し、未来の労働者である子どもを再生産する(育てる)役割を果たしており、資本にとって不可欠である。
②専業主婦の労働力も、日々、再生産されており、それに必要な費用は、夫の賃金から出されている。つまり、家事労働力の再生産に必要な費用の支払いは、資本によってなされている。
③しかし法的には賃金は「労働の対価」として夫に支払われ(家族手当も夫の手当)、そのため妻と子どもを「夫が扶養する」という外観になる。それが家庭での夫の「権威」のもとになる。
④夫の賃金に妻と子どもの生活費があらかじめ含まれている事を見抜いても、「夫による扶養」という外観はかわらない。そこで、夫の「権威」からの最終的な解放は、女性の経済的自立によるしかなくなる。以上のような議論です。
例によって、あらっぽい問題提起ですが、みなさんのご感想はいかがでしょう。これが資本主義における主婦の経済的地位ということにもなるわけです。
男性長時間労働と女性差別は一体
もう一つここで強調したのは、日本のひどい女性差別が、世界最長の労働時間で酷使するという財界の男性労働力管理と一体になっているということでした。「24時間はたらけますか」式の男性酷使のためには、あらゆる家事を女性に強制することが必要で、それが職場から女性を排除する強い動機になってきたということです。
1968年の文部省『家庭の設計』は、既婚女性の役割を、①家庭管理者としての主婦、②仕事でつかれた夫を安らがせる妻、③子どもを成長させる母、④自らもはたらく勤労者、⑤社会活動に参加する市民とまとめました。財界と政府は手を結んで「男は長時間労働、女は家庭とパート」を推進していたわけです。
このような検討の視角は、現代資本主義を分析する上で、欠かすことのできないものになっています。
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