以下は、全国商工団体連合会「全国商工新聞」2011年1月10日、第2957号に掲載されたものです。
見出しは、編集部がつけてくれました。
----------------------------------------------------------
「2011年政治展望 民主・自民離れの道さらに/平和と安心守る政治実現へ」
年が明けました。今年も力をあわせて、頑張りましょう。
「2011年の政治展望を述べよ」という、ずいぶん難しいテーマをさっそくいただきました。ここでは、政治の大きな流れをとらえるいくつかのポイントについて書いてみます。
〔政治の読み方〕
最初に「政治の読み方」の基本についてです。これについては、マルクスとともに活躍したエンゲルスの次の文章が的確です。
現在進行中の政治を見るには、「政治的闘争を、経済的発達から現存の社会階級および階級分派間の利害の闘争に還元すること、そして個々の政党が、これらの階級や階級分派の多かれ少なかれ適当な表現であることを証明すること」が必要だ。これは、マルクスの『フランスにおける階級闘争』という本を編集した時に、エンゲルスが「序文」の中に書いた言葉です。
現代の日本に置きかえるなら、階級間の「利害の闘争」の中心は、大企業・財界とその他の国民とのぶつかり合いです。それが、選挙の時には、財界の経済的利益を守ろうとする民主党や自民党などと、働く者の暮らしを守ろうとする共産党などとの衝突となって現れるわけです。
昨年夏の選挙では、財界が要望する大企業減税・消費税増税を、そのまま飲み込んだ菅・民主党ですが、財界との結びつきはさらに深刻です。例えば参院選のマニフェストが語った「強い経済・強い財政・強い社会保障」はその全体が「民間活力で経済を再生し世界に貢献する」という日本経団連の総会決議(2010年5月27日)と基本的に同じものでした。問題は税制だけではないのです。
菅・民主党は、鳩山前首相が一度は躊躇した財界からの献金を、あらためて「受け取ります」と表明しています。これによって民主党は、再び財界から政策とお金の両方を受け取る政党に戻りました。両者の結合ぶりは、日本経団連のホームページの「コメント」や「政策提言」のコーナーを見れば、実感をもって理解することができます。皆さんも、ぜひ一度、のぞいてみてください。
〔2大政党の破綻〕
09年から10年にかけての政治は、自民党から民主党への政権交代、鳩山・民主党の特に基地問題での迷走、菅・民主党の旧自民党路線への復帰‐‐アメリカへの従属と財界いいなりが柱です‐‐といった具合に揺れました。戦後の歴史でもまれにみる大揺れです。
注目したいのは、その揺れの中で、民主党政権に対する国民の評価が急速に下がっているということです。
実は日本経団連は、自民党が政権から落ちた時のことを考えて、03年から民主党を育てる努力をしてきました。第二自民党の育成です。「自民がコケたら、民主でね」「どっちにコケても財界本位」というのが狙いです。
ところが、昨年の参院選で、その企みの破たんが始まってしまいました。選挙制度によって、議席の上では自民党の勝利となりましたが、得票率(実際の国民の支持を表す)で見れば、自民・民主両党の合計は、05年総選挙69・2%、07年参院選67・6%、09年総選挙69・1%から、10年参院選で55・7%と、大幅な減少を見せたのです。
これは少なくない国民が「自民はダメだが、民主もダメだ」と、自民でも民主でもない政治のあり方を探り始めたということです。2011年度の政府予算案を見ても、財界・アメリカいいなりという民主党の立場は変わっていません。ですから、2011年の今年、国民はこの民主・自民離れの道をさらに前に進むしかありません。
〔政治の中身こそ〕
ただし、その変化を実りの大きなものにするためには、私たちの取り組みが必要です。
ここで押さえておくべき重要点は、民主・自民以外の政治を探り始めた国民が、「では次の政治は?」という問いに、まだはっきりした答えを持っていないということです。
参院選でみんなの党に票が集まり、共産党が後退したのは、その一つの現れでした。そこで、今年は、新しい政治の打ち出しを、いっそう積極的に行うことが必要になります。「国民の平和と安心を守る政治」、そういう政治の中身とそれを実現していく筋道を、国民と一緒に考える取り組みが必要になるのです。
そして、その時に、そもそも「人の世」はどうあるべきなのかという大きな「哲学」を、あわせて展開することが重要です。例えば、理由はどうあれ生活に困り、食えなくなった人が死んでしまう、それを見過ごす社会でいいのだろうか。そういう人間社会をめぐる根本的な「哲学」についての議論です。そこを正面から問うことで、国民の人権意識を根元から鍛えていく必要があると思うのです。
ここに本腰を入れるには、学びの活動が不可欠です。学びの苦手な組織に、この世の中を変えることはできません。4月にはいっせい地方選挙が行われますが、その時点で、皆さんの知的輝きが一回り大きくなって現れてくることを、心から期待しています。
最近のコメント