以下は、日本共産党「しんぶん赤旗・日曜版」2012年8月26日に掲載されたものです。
---------------------------------------------------------------------
どうみる二大政党破綻、「維新」/神戸女学院大学教授石川康宏さんに聞く/〝小泉・竹中〟踏襲の「維新」 米国、財界優先/民、自の一部と合流狙う
民主・自民・公明3党による消費税増税法案の談合・強行。橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」の政党化・国政進出の動き・・。これらの動きをどう見るか。『橋下「維新の会」がやりたいこと 何のための国政進出?』(新日本出版社)の著者、石川康宏・神戸女学院大学教授に聞きました。(田中倫夫記者)
--野田内閣が国民から見放され、自民党への批判も強く、「二大政党政治」の破綻が鮮明です。
石川 財界は2003年に、旧民主党と自由党を合併させて今日の民主党とし、第2自民党として育てる戦略をとりました。その民主党が政権交代3年で完全に行き詰まってしまいました。担い手が自民党であれ、民主党であれ、国民は財界・アメリカいいなりという政治の中身を拒絶したわけです。
自民党も消費税増税、社会保障切り捨てなど国民生活軽視の路線は、民主党と同じです。そこで、政権復帰を目ざしながらも、見せかけの政府批判しかできません。それが自民への不信も強めます。どちらも国民の生活に寄り添おうという姿勢をもちません。ですから「二大政党制」の破たんは加速せざるを得ないでしょう。
自民と民主が、うり二つになっているのは、どちらも財界・アメリカの願いをかなえるためにつくられた政党だからです。自民党は戦後、反共・再軍備・改憲を推進するアメリカや、復活しつつあった財界の要望にそってつくられました。民主党はその政治の継続を目的につくられた政党です。こうして両者が似すぎていることが、アメリカ型の二大政党制を実現する、むしろ障害となりました。支配層の焦りが生み出したジレンマです。
--安倍晋三元首相ら自民党や民主党の一部議員が「大阪維新の会」との連携・合流をにらんで動いています。
石川 「維新の会」は中央政界や財界との結びつきが必ずしも強くなく、国政進出の足がかりをいろんな形で求めています。そのひとつが右派勢力にこびを売るということです。「維新八策」の第2弾(「レジュメ」)では、「首相公選制」の討論点に「天皇制との整合性」、また〝安全保障の観点からの外国人への国土売却規制〟が挙げられました。「戦後レジームからの脱却」を求める安倍晋三氏らへのすり寄りです。
しかし、安倍氏は古い日本に戻れとはいうが、日本の未来を語るわけではありません。「維新」が彼らと結びついても新しいビジョンは出せません。あれだけ既成政党批判をしていたのに、自分たちが国政に出るとなった途端に、既成政党中のもっとも古い流れと結びつく。これでは、「維新」どころか、「復古」の会ではないかと思います。
--「維新の会」が国政に進出すれば・・。
石川 だれのための政治なのかが評価のポイントです。府知事時代に橋下氏は、〝住民サービスは市町村の仕事〟といって生活関連予算を切り捨てました。そして大阪市長になったいま、やはり住民生活予算を切り捨てています。浮いたお金は大型開発などで大企業に流しているのが実態です。「維新八策」では、いろいろな「大阪方式」を国政で実施するとしていますから、ろくなことにならないのは明らかです。
「維新」と財界のこれまでの最大の接点は「道州制」でした。「大阪都」もそこへのワンステップです。府知事になった年に、橋下氏は早くも「関西州の夢」を語ります。今年の関西財界との新年互礼会でも〝道州制をやるから支持してくれ〟といいました。「道州制」というのは、自治体予算をまとめて大企業支援のために活用する究極の「構造改革」です。その最大の推進者は、日本経団連などの財界です。
橋下氏は経済政策は「小泉・竹中路線」でいいと繰り返し、ブレーンにも「構造改革」論者を集めており、〝大企業が栄えれば、いまに下々も潤う〟という大企業優先の政治を推進することになるでしょう。
--国民の願いにこたえる政治をつくるためには、どういうことが必要でしょうか。
石川 「維新の会」が国政進出を果たしたとしても、政治の中身は何も変わりませんから、そこに未来はありません。
国民は「自民、民主型」でない政治を求めています。しかし、新しい政治の担い手については、まだ具体的な像を結んでいません。とはいえ、消費税、原発、米軍基地、TPP(環太平洋連携協定)などの問題での広い国民の運動は、日本共産党の主張や行動と深く重なるものになっています。
いまは個々の政策とともに「本来、政治はこうあるべきでは」「こういう社会をめざそう」という理念をわかりやすく語ることが大切です。新しい政治の具体的なイメージを語るということです。
そのために共産党のみなさんにお願いしたいのは、ツイッターやフェイスブックの活用です。仮に共産党員1万人が声をあげれば、それを瞬時に数百万人に届けることができるのです。「苦手だ」といわずに「学んで」ほしいと思います。
最近のコメント