以下は、全国商工団体連合会「全国商工新聞」2013年8月5日付、7面に掲載されたものです。
見出しは編集部がつけてくれました。
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参議院選挙の結果を、国民による新しい政治の模索と探求の過程に位置づけたい。
前提として、(1)90年代末の国民による自民党批判の高まりに、03年から財界主導での自民・民主〈二大政党制〉づくりが進められたこと、(2)高まる批判の中で、09年に自民党が野に下り(民主党政権の誕生)、ここから国民による自民党政治に変わる新しい政治の模索と探求が顕著になったこと‐こうした流れを確認しておきたい。
選挙結果は、第一に、民主党の壊滅的危機のますますの進行を表した。
「コンクリートから人へ」など、自民党政治の一定の転換を掲げたことで、民主党は09年の衆議院選挙で2984万票を得て政権に就いた(以下すべて比例選挙の得票)。
しかし、今回選挙での得票はわずか713万票で、4年前の4分の1以下に激減している。その主な要因は、東日本大震災以後の被災地支援のデタラメぶりと、原発再稼働、TPP推進、消費税増税、オスプレイ配備など、あきれた悪政の連続だった。
政権を追われた12年末より今回さらに250万票を減らした民主党は、今も崩壊進行の過程にある。
これによって財界がもくろんだ〈二大政党制〉づくりは完全に破綻した。
自民・公明は得票回復せず
第二に、それにもかかわらず自民・公明は得票を回復することができていない。
民主党の非理性的な自爆的政治運営による瓦解の中、12年末の衆議院選挙で自民・公明両党は09年以来の政権復帰を果たした。
だが、それは国民の支持の回復によるものではない。その点は今回の選挙も同様である。政権を失った09年の両党の得票は、自民1881万票、公明805万票だったが、今回選挙でも自民1846万票、公明757万票にとどまっている。
民主が09年以後今日までに2200万票を失ったにもかかわらず、自公はそれをまったく取り戻すことができていない。
今日の自公政権は、民意を反映しない不公正な選挙制度に多くを負っている。
今回の選挙で自民が獲得した議席は65だが、そのうち47が選挙区選挙によるもので、その6割を超える29が1人区(小選挙区)での議席であった。
大手メディアが12年の選挙を「自民圧勝」、今回の選挙を「自民大勝」と描いてみせるのは、自公政権の国民的な支持基盤のもろさを覆い隠そうとしてのことであろう。
第三に、「第三極」の主力とされた「みんな」と「維新」の勢いが止まった。
民主や自公に代わるものとして、10年の参議院選挙では「みんな」が794万票、12年の選挙では「維新」が1226万票を得て、それぞれ華々しいデビューを飾った。
それは一面では、新しい政治を求めるこの段階での国民による模索の結果であり、他方では、両党を「第三極」の主力と持ち上げることで、政治転換の視野をこの枠内に閉じ込めようするメディアの思惑の結果でもあった。
しかし今回の選挙での両党の得票は、「維新」636万票、「みんな」476万票で、ピークの60~50%まで落ち込んでいる。
この後退は「維新」の橋下・石原両代表による時代錯誤の暴言に加速されたが、より根本的には、両党の果たす役割が、古い自民党政治を補完・促進するものでしかないことが、多くの国民に知られるようになった結果である。
共産が自民と正面から対決
第四に、国民による政治探求の視野に、初めて日本共産党が深く入りこんだ。日本共産党は2000年代に400万票台半ばから後半の得票を得ていたが、09年の494万票を最後に、民主や「第三極」の一時的なブームに押される形で、10年356万票、12年369万票と後退していた。それが今回は514万票である。
前進の理由の根本は、アベノミクス批判、ブラック企業との対決、原発ゼロへの取り組み、護憲など、総じて自民党との正面からの対決姿勢である。
ツイッターの活用や「カクサン部」など、主張を国民に届ける手法の工夫も大きな効果をもった。
「他に選択肢がなかったから」という消去法的な支持も含め、重要なのは、これが国民による政治の模索の今日的な到達点だということである。
一時は熱狂的支持を与えた民主党政権に見切りをつけ、「第三極」ブームを終息に向かわせるなど、具体的な政治体験を重ねながら、国民はその自然な探求の延長線上に日本共産党を「新たに発見」しつつある。
今回の選挙で獲得した議案提案権も活用し、自民党との対決をうまくアピールし続けるなら、さらに大きな期待を集める可能性を持っている。
最後に選挙後の政治の展望だが、衆参のねじれを解消した自公政権は、消費税増税、原発再稼働、改憲、TPP加入、米軍基地問題など、選挙までの政治の「安全運転」の縛りを解くことで、どれにあっても国民多数の意思とのねじれを一層深めていくしかない。
それはこの政権と対決する国民の力をさらに鍛え、政治の激動的な変化をますます加速させるものとなっていくだろう。やりがいのある時代である。
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