小泉首相の8.15靖国参拝にあたり,中国政府は抗議声明を発表した。
「日本軍国主義侵略戦争の被害国人民の感情を著しく傷つけ、中日関係の政治的基礎を破壊するこの行動に対し、中国政府は強く抗議する」。
「靖国神社に祀られているA級戦犯は、日本軍国主義が引き起こし、実施した対外侵略の画策者と指揮者であり、近代史においてアジア及び世界に多大な災いをもたらした元凶でもある」。
「小泉首相が国際社会・アジア隣国及び日本国民の関心と反対を無視し、これらの戦犯が祀られている靖国神社を意地を張って参拝することは、国際的正義に対する挑発であり、人類の良識を踏みにじるものでもある」。
「中国は日本軍国主義による対外侵略戦争の最大の被害国であり、中国人民はあの戦争で多大な災難を蒙った。この歴史を正しく認識し、対処することは、戦後中日関係が回復し発展できる政治的基礎であり、両国がともに未来に向かう重要な前提でもある」。
「中日関係の健全なる発展を維持することは、両国人民の根本的利益に合致し、アジア及び世界の平和と安定に寄与する。中国政府と人民は中日友好を大切にし、それに努力しているあらゆる日本の政治家と国民とともに、中日間の三つの政治文書のもとで、『歴史を鑑とし、未来に向ける』という精神に則り、両国の平和共存・代々友好・互恵協力・共同発展に怠ることなく取り組んでいく」。
「われわれは、日本各界の有識者が歴史的潮流に順応し、政治的障害を取り除いて、一日も早く中日関係を正常な発展軌道に戻るよう努力することと信じる」。
また韓国政府も次のように述べている。
「韓国政府『小泉首相の靖国参拝に深い失望と怒り』 」(朝鮮日報)。
「チュ・ギホ外交通商部スポークスマンは15日午前9時、緊急記者会見を開き、小泉総理の靖国参拝に関する声明を発表した」。
「『日本の首相が、8月15日に過去の日本の軍国主義と侵略主義の象徴である靖国神社を参拝したことに深い失望と怒りを感じる。国際社会が重ねて伝えてきた憂慮と反対の声にもかかわらず、国粋主義的な姿勢で靖国神社を参拝したことで、韓日関係をぎくしゃくさせ、北東アジアの友好協力関係を損なってきた点を厳重に指摘する』」。
「『韓国は、日本の責任ある指導者たちが靖国神社を参拝することで韓日友好関係はもちろんのこと、北東アジアの平和と協力を妨げることがないよう、再度強力に要請する』」。
「『日本が平和と共同繁栄に寄与しながら、国際社会で責任ある役割を担おうとする意志があるならば、何よりも歴史を直視し、これを行動で示すことで、近隣諸国との信頼を積み上げなければならないだろう』」。
中韓ともに,かつての侵略と軍国主義を肯定する靖国の歴史観を問題としている。
しかし,これと対照的なのが,「首相靖国参拝は日中関係の構造改革」(産経新聞)といったマスコミの一部の参拝賛美。
「小泉純一郎首相の6年連続の靖国神社参拝、中でも今回の8月15日の参拝は、『歴史カード』を手に譲歩を迫る中国と、歴史上の負い目からそれに従い続ける日本という、20年来固定化していた日中関係のあり方に『構造改革』をもたらした」。
「また、首相が5年前の自民党総裁選の公約だった15日の参拝を果たしたことは、本来は優れて国内問題である戦没者の慰霊・追悼のあり方を、外国の干渉下から取り戻し、日本人自身の手に取り戻す大きな契機にもなり得るものだ」。
「持続的な経済成長のために日本との協力が不可欠な中国側に、『思うような成果は上げられないのに、これ以上、靖国問題でもめ続けるのはもう辟易(へきえき)』(外務省幹部)といった受け止めも広まっている」。
「『中国は、日本人の心の問題に踏み込んだことをきっと後悔する』」
「首相はかつて周囲に、こう漏らしたことがある。その通り、中国による日本の政界、財界、マスコミ界も総動員した靖国参拝反対キャンペーンは、日本人の贖罪意識を強めるどころか、中国への警戒心や反中感情を高める結果になっている」。
「首相の靖国参拝は、敗戦国に対して優位に立ち続ける中国と、その言いなりになる日本という不正常な両国関係を、対等で普通の関係へと一歩近づけたのは間違いない」。
記事は,首相の靖国参拝を「戦没者の慰霊・追悼」に矮小化し,「日本人の心の問題」に矮小化するのだが,アジアの2000万人以上を殺害した侵略戦争の肯定を,なぜ「国内問題」に解消できるかについては,議論をまったく避けている。
このジャーナリズムのあり方は,いまさらながらに深刻である。
小泉首相の参拝に反対する取り組みは日本各地で行われたが,その報道は多くない。
「靖国参拝反対の人文字 ろうそくともしアピール」(東京新聞)。
「小泉純一郎首相の靖国参拝に反対する韓国、台湾、日本の市民や遺族らが14日、東京都内の公園に集まり、ろうそくを掲げて『YASUKUNI NO』の人文字をつくり、参拝反対をアピールした」。
「この日は韓国や台湾、沖縄の歌手らが集い、平和を訴える野外コンサートを開催。その後、参加した約800人が灯をともしたろうそくを手に人文字をつくった」。
「『平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動』と名付けた抗議行動の一環で、遺族らは『侵略戦争を指導したA級戦犯を顕彰する靖国神社に首相が参拝するのは、侵略を肯定するものだ』と反発を強めている。15日も抗議のデモ行進を計画している」。
たくさんの右翼にかこまれながらの「行動」となっているようだが,心から連帯の気持ちを届けたい。
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