安倍内閣の瓦解により、靖国派流「教育再生」路線と財界流「教育改革」のバランスに変化が起こるものと思われる。
その方向を占う最初の材料の1つといえるのだろう。
「ゆとり」転換を正式決定 改定指導要領で中教審(東京新聞、11月7日)
学習指導要領の改定作業を進めている中教審教育課程部会は7日、約30年ぶりに小中学校の授業時数を増やして「ゆとり教育」を実質転換する「審議のまとめ」を正式決定した。公募した意見などを踏まえ、年明けごろまでに答申する予定。
文部科学省は来年3月をめどに改定学習指導要領を告示、早ければ2011年度から実施する。
審議まとめが示した改定学習指導要領の基本的な考え方は(1)知識を習得し活用する力を確立するための授業時数確保(2)改正教育基本法を踏まえた伝統や文化の尊重、国を愛する態度の育成(3)学習意欲の向上-など。
これらを実現するため、小中学校で主要教科を中心に授業時数を増やしたほか、小学校の英語活動や中学校体育での武道を必修化。ゆとり教育の目玉だった総合的な学習の時間は削減した。道徳の教科化は今後の検討事項として実質見送った。
授業時数増への対応や、子どもと向き合う時間を確保するため教員を増やしたり、外部の人材を活用したりすることが必要と条件整備にも言及した。
学習指導要領改定 中教審部会の「審議のまとめ」について 統制強化 授業を増 中教審部会 指導要領改定へまとめ(しんぶん赤旗、11月8日)
学習指導要領の改定について審議してきた中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の教育課程部会は七日、「審議のまとめ」を決定しました。
「まとめ」は「改定教育基本法において…伝統や文化を尊重し、我が国と郷土を愛する…態度を養うことなどが教育の目標として規定されたことを踏まえ、各教科の教育内容を改善する」とのべ、「道徳教育」や「伝統や文化に関する教育」の充実を掲げています。
各教科の「重点指導事項例」を示し、それを子どもが身につけているか全国学力テストなどを通してチェックする仕組みをつくるなど教育内容への国家統制を強める方向です。
日本の子どもたちの学力について「活用力」に課題があるとしました。その背景・原因を「知識・技能を活用する学習活動のためには授業時数が十分でない」として、算数・数学、理科などを中心に現行より時間数を増やし、小学一、二年で週当たり二時間、小学三―六年と中学の全学年で同一時間の増加が必要だとしています。
前回の「学習内容三割削減」で削られた「多位数の計算」(小学校)、「生物の進化」(中学校)など多くの項目が復活しています。
総合的な学習の時間については小中学校とも縮減し、中学校の選択教科も削減。小学校での「外国語(英語)活動」の時間を新設し、中学校の体育では武道の必修化を打ち出しています。
一方で、「教師が子どもと向き合う時間の確保」などの条件整備が必要との認識を示しました。
日本共産党の石井郁子・国会議員団文部科学部会長は談話を発表し、「改悪された教育基本法の具体化として、教育課程への国家統制を強めるものだ」と批判しました。
中教審は今後、十二月か翌年一月に答申を提出。文科省は今年度中に学習指導要領を改定する計画です。
教育統制強める 共産党国会議員団 石井文部科学部会長(しんぶん赤旗、11月8日)
中央教育審議会教育課程部会が七日公表した「審議のまとめ」について、日本共産党国会議員団の石井郁子文部科学部会長は同日、次の談話を発表しました。
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「まとめ」は、国が直接「重点指導事項」を教員に示し、その指示どおりに実施されたかどうかを全国学力テストなどでチェックすることにしています。さらに、本来多様であるべき「学力観」や「指導法」についても、特定の内容をしめしています。
これらは、改悪された教育基本法の具体化として、学校の教育課程への国家統制を強めるものにほかなりません。このようなことは憲法と教育の条理に反し、教育の自主性や創造性をうばうものであり、やめるべきです。
一、「まとめ」は、「習熟度別授業」など、競争と格差をひろげ、子どもを選別しようとする施策をあらためて強調しています。いま必要なことは、競争と選別をやめ、学力の底上げを進めることです。
また、「まとめ」は「家庭の責任」なるものを強調しています。「貧困と格差」で傷ついている家庭への公的支援にはまったく触れずに「責任」だけを押しつけるのでは、問題の解決にはなりません。
一、「まとめ」がこれまでの「学習内容の三割削減」をあらため、多位数の計算や生物進化など必要な事項を復活させたことは、現場の声をある程度反映したものです。
しかし全体として、不必要な学習内容も含んでおり、いま以上に深刻なつめこみ授業になる危険をはらんでいます。内容を精選・再編成して、総授業時数増なしで必要な学習ができる方向で見直すべきです。
小学校の外国語活動と中学校の武道必修化は、国民の間で意見が分かれており、強行すべきではありません。
一、「まとめ」は改悪教育基本法にそって、「愛国心」などを上から子どもに押しつけようとしています。国家による内心の自由の侵害は許されません。しかも、沖縄「集団自決=日本軍による強制」を教科書から削除せよとの検定意見に一言もふれない姿勢は、歴史の改ざん、特異な戦争観の強制を容認するものとして厳しく批判されなければなりません。
また「道徳」では、「学校生活で子どもの人権を尊重する」との視点を欠いており、子どもの声を聞き取る姿勢もありません。
一、「まとめ」は、教職員の定数増や教科書・学校図書館の充実に言及しています。現在、教員は総じて過労死ラインで働きながらも、授業準備など子どもと向き合う時間が確保できない状態にあり、教職員増は急務です。ところが政府・財務省は、増員どころか削減を計画しています。
国民の力でこうした自公政権の動きにストップをかけ、教育条件を前進させることをよびかけます。
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