「構造改革特区」
神戸女学院大学・石川康宏
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小泉内閣の「構造改革」は,アメリカ大企業・大銀行むけの市場開放と,日米大企業が求める規制緩和の実施を大きな柱としています。
そのなかで「構造改革特別区域法」(02年12月公布)にもとづく「構造改革特区」は,規制緩和を促進する中心的な手段と位置づけられています。これは,まず地域限定で規制緩和の「実験」を行い,それで「特段の問題のないものは速やかに全国規模の規制改革につなげる」(03年版「骨太の方針」)というものです。
各地での「実験」にお墨付きをあたえる組織として,すでに政府の特区評価委員会(委員長・八代尚宏日本経済研究センター理事長)が立ち上げられています。認定されている特区の数は,昨年4月のスタート以後8月までに全国164カ所,さらに10月には第4次の募集が行われ,04年1月には236カ所に増えました。
「構造改革特区について」(03年9月,内閣官房構造改革特区推進室)は,特区の目的が「我が国経済の活性化」「民業の拡大」にあるとして,その具体例に,教育特区,国際物流特区,農村活性化特区,国際交流特区,まちづくり特区,新エネルギー・リサイクル特区,地方行革特区,福祉特区,医療特区,産学連携特区をあげています。
ここにつらぬかれるのは,各種事業に対する国や自治体の責任を後退させ,それらを大企業の自由な営利活動にまかせていくという方向です。
福祉特区と医療特区には,特別養護老人ホームや病院経営への株式会社の導入があげられています。これは福祉や医療を提供する国・自治体の責任を放棄し,財政の構造をますます大企業本位につくりかえながら,「福祉の民営化」によって民間企業に新しいビジネス・チャンスを与えようというものです。
この構想の背後には,日本の大企業と,日本市場への進出をさらに深めたいアメリカ大企業の野望があります。
たとえば,96年には日本最大の財界団体である経団連(当時)が「内外企業の自由な事業展開を認める経済特区・エンタープライズゾーン(企業優遇地域)」を提言していました。
また,02年4月の経済財政諮問会議で,今回の特区実現の大きなきっかけをつくった民間4議員は,そのうち2人が奥田碩・日本経団連会長と牛尾治朗・元経済同友会代表幹事という日本財界の文字どおりのトップです。
さらに,03年3月に「対日投資促進プログラム」をつくるなど,政府はアメリカ大企業等の日本進出を推進していますが,実は,福祉分野への株式会社の進出は「在日米国商工会議所」からの強い要求でもありました。この経過があるので,03年5月に来日したブッシュ大統領は,日米首脳会談の中であえて「構造改革特区は創造的な取り組みだ」と高く評価しました。
以上のことから,国と地方での「大企業・アメリカいいなり政治」の転換を大きく展望しながら,全国各地での特区の実際をよく監視し,その問題点を具体的に指摘していく取り組みが大切になっていると思います。
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