以下は、「しんぶん赤旗」2008年11月9日付の読書欄に掲載されたものです。
見出しはすべて編集部がつけてくれたものです。
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不破哲三著『社会進歩と女性-「女性の世界史的復権」の時代が始まっている』
男女平等の過去・現在・未来
21世紀 女性運動の役割鮮明に
この本は、2008年9月に行なわれた、女性講演会での講演をもとにしたものです。 主題は「今日の世界と日本における女性の地位」で、第1章「女性解放の道―古典から学ぶ」、第2章「世界で女性の地位はどう変わってきたか」、第3章「日本社会では異常な女性差別が続く」、第4章「世界と日本を動かす主役として」という構成になっています。
世界変化の追究
著者は、最初に、女性問題を「ルールなき資本主義」の最大の焦点の一つだと述べていますが、これはきわめて重要な位置づけです。男女平等を社会改革の副次的な課題だとする視野の狭さが、私たちの身のまわりにも少なからず残っていますので。
第1章では『家族・私有財産・国家の起源』でのエンゲルスの卓見が紹介され、特に人類共通の財産となりつつある内容が、次のようにまとめられます。1つは男女平等には法律的平等だけでなく社会的平等が必要なこと、2つはそこで決定的な意義をもつのが「女性の公的産業への復帰」であること、3つはそれが女性の仕事と家庭の両立を保障する社会制度を必要とすること、4つは不平等の経済的基盤を除いてこそ平等が発展するということです。
第2章で著者はこの講演の準備過程での最大の収穫が、女性差別撤廃条約(1979年国連総会で採択)とその後の世界変化の追究にあったと述べています。戦後の世界では「女性の公的産業への復帰」が大きく進みましたが、女性差別撤廃条約はこれを支える社会制度づくりを、世界共通の緊急課題と認める意義を持ちました。これを受けて著者は、この条約を転換点として、かつてエンゲルスが未来社会に希望を託した「女性の世界史的復権」が、資本主義の枠内で開始されたと結論します。ここは本書のもっとも重要なポイントとなる点です。また「同一価値労働同一報酬」(1951年ILO)の原則が、職場での男女平等を推進する重要なルールの一つだとされている点も、しっかり確認しておきたいところです。
社会体制転換へ
第3章では、日本における男女平等の実態が、各種の国際機関によって“落第国家”の認定を受けていること、こうした遅れの最大の原因が利潤第一主義を最優先してきた財界と政府与党の姿勢にあること、そして戦前の「家」制度を美化する靖国派が、これを右から応援する反動的な応援団となっていること等が述べられます。さらに資本主義の枠内で開始された「復権」が、その枠内で十分に達成されないところを残せば、それは社会主義でより全面的に実現すれば良いと、民主的な要求の実現と社会体制の転換との関係を柔軟にとらえているところも重要です。
最後の第4章では、日本における女性運動の歴史と到達点を、新日本婦人の会に焦点をあてながらふりかえり、世界全体が大きく変わる21世紀に女性運動が大きな役割を果たすことへの強い期待が述べられます。
著者は、女性差別撤廃をすすめる“戦略戦術”の第一に、社会的な啓発の必要をあげていますが、まずは本紙読者のみなさんに、男女を問わずこの本の精読をお勧めしたいと思います。
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