以下は、新日本婦人の会「新婦人しんぶん」2011年2月10日、第2877号、第5面に掲載されたものです。
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第11回・「少子化」問題を考える
最近のこの連載、ちょっと難しいですか? ラストスパートをかけて、がんばってついて来てくださいね。今回は『経済』の2006年9月号に書いた「人口変動とマルクスの資本主義分析」という論文です。少子化問題の特集でした。
歴史人口学と『資本論』
この論文のために、私は歴史人口学を初めて学び、マルクスの『資本論』を人口という角度から読み返してみました。
勉強してみると、歴史人口学は百万年以上も前の地球人口の推計から、21世紀の途上国での人口爆発と「先進国」での少子化まで、様々な研究を積み重ねているのでした。
その一方で、『資本論』にも私なりの発見がたくさんありました。マルクスの人口論といえば、景気の変動に対応するために、資本主義は労働者をいつも多めに確保している(失業者などの形で)という「相対的過剰人口」論が有名です。
しかし、その他にも、①資本主義は労働者人口を増大させる、②賃金の上昇が労働者の死亡数・出生数を低下させる、③労働者階級は全体として「短命」である、④労働人口に占める農業人口の比率が低下するなど、多面的な分析があることがわかりました。
面白かったのは、資本主義のもとで多産多死から多産少死へ、さらに少産少死へ社会が変化する――歴史人口学が「人口転換」と呼んでいるこの過程の研究に、マルクスの研究と重なるところがたくさんあったことでした。
現代の少子化問題は
歴史人口学は、20世紀後半からの「先進国」での少子化を「第二の人口転換」という言葉もつかって研究し、その要因に未婚・晩婚の広がり、離婚率の上昇といった「文化」の変容をあげています。
しかし、私はその根底には、「男は仕事、女は家庭」という「近代家族」が変化を始め、女性の職場進出が進んだにもかかわらず、戦後、男女ともに家庭と仕事を両立させるための条件が十分つくられてこなかった――そういう、社会のしくみの問題があると考えました。さきほどの新しい「文化」は、むしろそうした現実の結果ではないのだろうかと考えたのです。いかがでしょうね。
こうして私のジェンダー研究は、思わぬところで人口問題と結びつき、また少子化問題の克服という角度から、ジェンダー平等の人類史的な意義をあらためて考えさせられる、ということにもなったのです。49才の時の論文でした。
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