1)テキスト65~76ページまで。「海の国」「山の国」と対抗と合作の中で「規制緩和」がすすめられる。「規制」とは経済に対して政府が与えるルールのこと。その核心は行き過ぎた金儲け第一主義の抑制である。JR西日本,雪印乳業,三菱自動車,ライブドアなどに代表される「もうけのためならなんでも」という衝動を管理すること。野放しの自由競争には他人の社会全体の利益を無視したモラル軽視がふくれまれる。「構造改革」がこの規制を「緩和・改革」する。主な内容は,①外資参入の条件づくり,②各種「保護」の解体,③日米財界への新規市場の形成の3つ。①の典型は金融ビッグバン,③の典型は郵政民営化。②はたくさんあるが「労働力流動化」に対応した労働法制「改革」など。その中には「雇用機会均等」を理由にした「女性保護」の撤廃もある。本来行なわれるべきは「過労死の男女平等」ではなく,「男女ともに安心して働ける」条件づくりであったはずだが。「資本主義は自由競争だから」という時代錯誤にだまされてはいけない。
2)「海の国」「山の国」の対抗と合作は,より大きな利害対立を労働者・国民とのあいだにもっている。ゼネコン国家化と各種規制緩和が90年代自民党の得票率低下をもたらし,「無党派」を形成させる。その無党派層の再獲得のために小泉首相による「自民党をぶっ壊す」のスローガンがかかげられる。一時的な成功はあったが,個人人気の継続には限界がある。そこで,これをカバーするものとしてアメリカにならった二大政党制づくりが追求される。93年の細川内閣時に小選挙区制が導入され,この道の具体化が開始される。あわせてこの内閣は「自己責任原則と市場原理に立つ自由な経済社会の建設」をいう「平岩レポート」を出してもいた。「海の国」による「山の国」の糾合という路線は,すでにこの段階で政財界の重要な潮流のひとつとなっていたわけである。
3)つづいて竹中流「構造改革」の具体策の検討に入る。まずは経済構造改革の目的論としての「高コスト体質の是正」。「海の国」の製造業大企業にとっての「国際競争力強化」のための生産コスト(必要経費)の削減である。原材料・部品のコスト削減は中小企業へのしわ寄せとなり,人件費削減は労働者へのしわ寄せであるリストラ推進の力となる。設備・債務・雇用の削減というその主張と,当時の経団連の要求はまったく一致しており,これが後の「産業再生法(リストラ促進法)」となる。これによって2%成長が可能になるというが,国内の個人消費は堀くずされていく。それで,どのようにして成長が可能となるかの理由はまったくふれられないが,要するに国内消費はあてにせず,「海の国」らしく世界市場で利益をあげるということである。「海の国」の利益のために,労働者・中小業者を犠牲にする。これが「構造改革」の目線である。
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