1)まずは定期試験の方法を紹介。テキスト第8章「多国籍企業と通商政策」を読んでいく。「通商政策」とは対外経済政策のこと。1960年代にはアメリカで多国籍企業への注目が集まる。これを定義する大切な要素は,①対外直接投資と,②世界的視野での経営。企業の多国籍化にともない,また外国為替取引を通じた利殖の必要にともない銀行の多国籍化もすすんでいく。アメリカ多国籍企業は,①現地生産・現地販売を目的にヨーロッパ・日本などの先進国(高消費地)に進出し,②途上国については現地生産・対外販売(アメリカや第三国へ輸出)の拠点と位置付け,③NAFTAで経済的国境が希薄化されているカナダ・メキシコとの間には企業内国際分業を展開している。
2)60年代のヨーロッパへの進出につづいて,70年代には途上国の進出が強まるが,その背後には,①世界的規模での植民地体制の崩壊と,②途上国側での外資導入による経済成長路線の追求があった。途上国との賃金格差は大きく,これが途上国進出の重要な要因となった。特にEUの比率増により,対外直接投資残高(累計額)にしめるアメリカのシェアは低下しているが,それでも対外投資国,投資受入国として依然世界最大の一国である。対外進出する企業の業種としては,自動車,石油精製・販売に加えて,通信や小売などサービス企業が台頭しており,サービス業にまつわる規制緩和を各国に強く求める要因となっている。
3)70年代半ば以降,アメリカは貿易赤字国家となる。80年代半ばには純債務国家となるが,それでも貿易が長期にわたってつづけられるのは基軸通貨ドルの力。貿易にしめる企業内国際取引のシェアは30%をこえており,これが2000年を境に赤字となっている。「通商政策」には,①貿易(国内生産)重視と,②多国籍化(海外生産)重視の2つのチャンネルがあるが,ニクソン政権以後力点が②に移行する。ただし,これは「職(雇用)の輸出」やそれによる国内賃金の引き下げ圧力を強めるものとなり,個別多国籍企業の利益と一国経済(国民の生活)との矛盾を拡大するものとなっている。
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