ビデオ『ワーキングプアⅡ-努力すれば抜け出せますか』を見る。
生活保護水準以下のワーキングプア世帯は400万。日本中の全世帯の1/10。「女性たちの悲鳴」は,非正規雇用のダブルワークで2人の子どもを育てる母子世帯の母。児童扶養手当が半減する可能性があり,ますます暮らしは厳しくなる。政府の就労支援は職業教育をすすめるが,その学校に通うゆとりがない。「私は自助努力が足りないの?」という言葉が悲痛。
20代独身女性は,父の病気のために「キラキラ輝いていたものが闇の中に入ってしまった」。推選入学が決まっていた専門学校を断念して,朝5時半から町立病院の調理ではたらく。調理の民間委託によって時給は700円から670円へ,10万円ほどのボーナスもなくなってしまった。妹も同じ仕事を行い,2人合計で月収は16万円。独学で調理師免許をとったが時給アップは10円のみ。「がんばっても,がんばっても,そこにたどりつけない人が負け犬と呼ばれるのはひどい話だ」と。
岐阜の中小繊維業者からは「自分ははたらく意志も能力も向上心もあるがワーキングプアです」と。低価格の海外製品との競争に加えて,研修生の名前で中国人労働者が大量に入り,労働コストの引き下げ競争がつづいていく。娘のもとに夫の遺影と仏壇だけをもっていくと工場を閉鎖した母は「甲斐性のない親で悪いなあ」と涙をうかべる。
同じ地域ではたらく業者も「自分の仕事でゴハンが食べていけないのはさみしい」と。プレスの仕事の工賃が2~3年で半分以下に。バイトに出た夫は脳出血で倒れ,いまは妻が朝5時から,また夕方もパートに出ている。手に職をつけろという母のすすめで管理栄養士をめざす娘は,学費は自分で払いたいと奨学金を申請。
全国各地でこの10年に16万件の倒産・廃業がある。「どんなにがんばっても本業ではくらしていけない」「少子高齢化で外国人労働者を拡大すれば,新たなワーキングプアを増やすことになりかねない」とナレーション。
岩田正美氏(社会保障審議会委員)。日本の母子家庭の母は世界に例ないほどに良くはたらいている。就労支援を考えても,雇用側にもっと安定した労働条件をつくる意志がなければ無駄になる。
八代尚宏氏(経済財政諮問会議委員)。雇用のためには「構造改革」をすすめることで景気回復をはかることが第一。中小企業も企業である以上,お客があるところに移るしかない。低成長でもやっていけるビジネスに乗り換えなければ。
内橋克人氏(経済評論家)。研修生という名のチープワーカーの導入は,どん底へ向けての競争の装置。大企業の利益第一主義が問題。これでは勤労意欲自体がこわれていく。ワーキングプアもマジョリティになる。
老いてもはたらき続けねばならない生活。親兄弟を養うために苦労し,結果として年金資格を得るのに5年足りなかった元大工の夫婦は,2人で空き缶回収をして月5万円の収入のみ。いざという時のためにとってある70万円のために,生活保護さえ受けられない。このような無年金者は国の推計で約40万人。
月6万円の年金が,妻の特養ホームの入所費に消えていく男性は,公園の清掃による月8万円で自分の暮らしを成り立たせている。妻はアルツハイマー。特養の費用は,05年秋の介護保健法「改正」で1万円アップした。食費・部屋代が自己負担となったため。夫は自分が死んだあとのことを考え,妻についての詳しい介護日誌と少しずつの貯金を残そうとしている。「これが自分の生活。みんなそれぞれそうなんだよな」と寂しく語る。
ナレーションはいう。「まじめに働けば安心できる老後があると考えてきたが,これからワーキングプアの高齢化がすすむ,日本はどういう社会をめざすべきか」。
内橋氏。この高齢者たちは今の若者の明日の姿。貧困が再生産されている。国家と国民が乖離していて,いったい何が国家か。
八代氏。最低生活の保障を,年金・医療改革と一体で考えねばならない。「健全な市場主義」「効率的な社会」が必要。
岩田氏。一生懸命働いているのに貧しいのは,日本の生産力水準からすればおかしい。生活の最低レベルをはっきりさせる力を社会がもたねば。最低賃金,老後,1人親家庭など。
ナレーション。「7月のワーキングプア放映に1400件以上の反響があったが,これは初めての経験」「ワーキングプアは誰にでも起こりうること」「取材した誰もが懸命に働いていた,これ以上の自助努力を求められるのか」「政府は再チャレンジというがワーキングプアの実態調査もない」「若者が夢のもてない社会」「このまま競争社会でいいのか」。
ビデオの後,このような経済政策を支持した国民自身の責任を問いかけてみる。
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