初授業につき,半ばガイダンスの授業とする。経済関係の3つの科目の難易度と関係も述べてみる。
経済の比較および日本とのかかわりを学ぶ「比較経済論」では,前期「中国」,後期「インド」をとりあげる。成長著しく,また世界をリードする新しい核となりつつあるBRICsのうちの2国である。「頭脳立国」の道を選んだインドは,IT産業とこれを主導する科学・技術開発に大きな成功をおさめている。今世紀半ばには,中国・インドはアメリカをはさみ,GDPで世界第1・第3位となる。日本のマスコミは鈍感だが,世界構造は大きな変化を遂げつつある。
中国については感情的な論評が多いが,その理由の多くは,①侵略戦争時の蔑視の思想と,②戦後の戦争責任の曖昧化。蔑視の相手に批判されたくないということである。
中国経済の成長は世界全体でも著しい。高い教育・規律・技術,低賃金を見込んで,日米欧の大企業が入り,まずは「世界の工場」と見込まれる状態になる。つづいて国内での「中産階級」の成長から,「世界の消費地」としての地位も高める。2010年には世界第3位,2015年には世界第2位の消費市場となる見込み。
2008年北京オリンピック,2010年上海万博までは政府主導の開発ブームがつづく。その後も民間主導のブームがつづくと思われる。産業循環を内包する資本主義には景気の浮き沈みが避けられないが,中国政府はこれをうまくコントロールしている。市場を活用しながらも,市場への規制や介入が強い政治経済制度の独自性がある。これを単純に資本主義とはいいがたい。
日本の貿易相手として,すでにアメリカより中国が大きなウェイトをしめている。その中で小泉首相による靖国参拝をきっかけとした「政冷経熱」が,「政冷経冷」へと移行することを恐れた財界は,歴史問題の一定の整理を求めるようになっている。問題は靖国参拝にとどまらない。経済同友会はすでに「戦争の正視」を唱えている。ドイツの戦後に学ぶということである。他方,歴史認識へのアメリカからの批判が高まる背後には,中国の成長,東アジア共同体形成の動きに対応した,アメリカの東アジア政策の転換もある。
次回授業からはテキストを使う。受講者制限をするために出席表を出してもらう。
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