テキスト50~54ページを読む。
イギリスによるインド植民地化のダメージと遺産が論じられる。とはいえ、その遺産はあくまで、それ以前の社会の破壊によって強制された遺産であり、植民地を余儀なくされた人々が望んだものでは決してない。
遺産には、英語、行政機構、議会制度、インド移民(印僑)があげられる。とはいえ、移民は奴隷制をようやく廃止したイギリスが、その代替としてインド人の年季契約労働を活用したことが最初であった。
前回範囲にもどり、44ページからのイギリス産業革命のとらえ方を補足する。従来の説明はもっとも先進的な文化をもったイギリスに機械の発明にもとづく産業革命が起こり、これが資本主義を先導し、イギリス植民地帝国をつくる原動力となったというものである。
しかし、テキストが紹介する川勝氏らの議論によれば、イギリス産業革命は、むしろインドからの木綿輸出によるイギリス産業の危機から生まれたものであった。
両者のもののとらえ方には、世界史におけるヨーロッパとアジアの関係をどうとらえるかというより大きな問題が付随している。イギリスが先進的だったとの議論には、長い歴史の中でヨーロッパがつねに先進的であったとの先入見がこびりつき、アジアは停滞的であったとの理解が同時に存在しやすい。
これに対して、川勝氏等の議論は、イギリス等ヨーロッパ地域が先進的になりえたのはむしろ資本主義成立以後の短い期間だということになる。
歴史の事実は、もちろん事実自体によって確定されるものだが、イギリス資本主義の「先進性」から、イギリス社会の歴史的先進性と誤解したり、他方でアジアを長期停滞の社会ととらえる傾向には、強い意識をもっての自己点検が必要である。
最近のニュースもいくつか紹介。GEのイメルト会長がアメリカ経済の減速を中国・インドの成長が補うと発言。インドの成長に取り残された多くの貧困層の生活改善を求める取り組みがある。
さらにインドを訪問したポールソン米財務長官は、インドの経済・金融改革の継続を求めて、インド政府が開始した外資流入規制の動きを牽制し、またアメリカとの原子力協定の実施を強く求めている。それはもちろんアメリカの国益にそってのことだが、インドの自立性と経済・社会を統治する政治の能力が問われることになる。
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