はたらくことの必要性、はたらく先輩の実際など、これまでは主に個人の視野から問題を見てきたが、今日ははたらくことにかかわる社会的条件について。
第一は、今日の景気と就職の関係について。「景気回復」「就職改善」の見出しが新聞に踊るが、景気は明らかに二極状態。その二極のなかで、雇用者の賃金水準は97年をピークに低下している。大きな要因はリストラ。
リストラは賃金抑制、人員削減などとともに、正規雇用減・非正規雇用増への雇用形態の転換をすすめる。その中では、はたしてどのような「就職改善」がありうるか。
内容を詳しくみれば、正規雇用の有効求人倍率0.6の穴を、非正規雇用がうめた結果が「就職改善」。正規の4割の低賃金にあえぐ非正規を、正規と同様に求人にふくめるところにトリックがある。就職戦線は依然キビシイのが実態である。
第二は、就職することによってその間に入らずにおれない労使関係について。労使が力をあわせることによって経営が維持されるという相互依存と、労使は経営の成果の分配をめぐり対立するという二面をもつ。
労使の1対1関係においては使用者側が有利となる。そこで憲法は、第28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」。労働組合をつくる権利(団結権)、団体交渉の権利、争議をする権利(団体行動権)は、労働3権あるいは労働基本権として認められている。
「春闘」や「ストライキ」は、この団体行動権の行使にあたるもの。春闘は、毎年4月からの労働条件改善をもとめて全国一斉に行われる春季生活(賃金)闘争。ストライキはその目的を達成するために労働者(労働組合)が行う闘争手段のひとつ。それは職場放棄をつうじて、経営者への利益保障をストップし、要求実現への圧力をかけるもの。
「労働組合には近づくな」といった風潮が日本の企業社会にはあるが、それがヨーロッパとの労使の力関係の格差を生み、労働者を多数者とする一般国民の生活保障レベルの格差を生む。労働者や労働組合の力が弱い社会では、そこが後進的となる。
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