ビデオ「NHKクローズアップ現代・2008マネー新潮流・どうなる今年のくらし・経済」を見る。
時間が足りず、最後はカットし、以下のような解説を添える。
①サブプライムローン問題そのもの。アメリカでの長期にわたる住宅価格の高騰を背景に、住宅を担保とした低所得者向けに行われた融資がサブプライムローン。
貸し手である銀行の側には債権が生ずるが、これを手元におかず、他の金融商品とミックスして証券化し、販売するということが行われた。
ところが06年には住宅価格の高騰が止み、反転が始まり、そこからローン返済の焦げつきが始まる。サブプライムローンを組み入れた証券の低下がはじまり、これが莫大な損失を生んだ。OECDは、損失額合計を33兆円と発表したが、これにとどまる保障はない。
アメリカでは、シティ・グループ1兆9000億円、メリルリンチ1兆9600億円、モルガンスタンレー1兆1000億円の損失が発表された。アメリカ金融業界の貸し渋りがアメリカ全体の消費を引き下げ、この世界最大の市場の萎縮が世界各国に影響を及ぼしている。
きっかけは「信用度の低い債権であっても、売ってしまえば金になる」という金融機関の無責任さ。
②世界の経済構造の大きな変化を印象づけたのは、これに中東や東アジアの政府系ファンドが救いの手を差し出したこと。シティにはUAEのアブダビ投資庁が8500億円、メリルリンチにはシンガポールが5000億円、モルガンスタンレーには中国が5700億円と。
政府系ファンドの運用には当然政治判断があり、これらは世界経済の混乱を避けようとする意図から行われていること。中国にしても輸出の2割はアメリカ向けであり、アメリカ市場を支えることの意味は大きい。
あわせてサブプライムローン問題が、ドル安からドル不信任へと拡大すれば、保有量が最大のドル外貨は急速に価値を低下させる。その一歩前の段階での、急速すぎるドル安(元高)を回避したいとの意向もあると思われる。
いずれにせよグローバリゼーション下のマネー経済の発展は、世界各国経済の相互依存を深めている。問題は「アメリカだけのこと」ではない。それが政府系ファンドによる救済判断につながっている。
他方、アメリカ経済を新興国が意図して救うという図式は、世界のパワーバランスの大きな変化を象徴するもの。
③さらに事態を大きくとらえると、なぜいまマネーゲームの拡大なのかという問題がある。モノやサービスの生産・販売を行う実体経済に対して、マネー経済は「利殖の可能性」という以外のいかなる使用価値も生み出しはしない。
食料、水、資源、エネルギーなどの不足が世界の大問題である中で、両者の乖離は拡大している。
根底にあるのは、消費に対する生産過剰の問題。潜在的消費力(貧困脱出への必要)の顕在化を抑制するのは、資本蓄積(格差拡大)の論理そのもの。低賃金、低価格での資源の買い上げ等、一方における富の形成は、他方における相対的な貧困の産出と裏腹である。
世界的なマネー市場の混乱状態を脱するには、1つにはヘッジファンド、政府系ファンドなど巨大マネーの運用に対するルールをつくること、2つには人々の生活のためにマネーを活用し、世界的規模での貧困の克服による長期的な世界経済発展のプランをもっていくこと。それには世界全体での連帯を根底にもつ経済の共同管理が必要となる。
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