テキスト第3章「『構造改革』路線と財界」の103~137ページを読んでいく。
財界による財界のための「構造改革」だが、その全体像が明らかになるのは96年の豊田ビジョンが最初。
同ビジョンは「構造改革」の内容を、「フルセット産業構造」から「ハイブリッド産業構造」への転換と述べ、そのハイブリッド産業への集中的な支援の体制を求める。
それら産業は、具体的には自動車や電気機械を中心とする多国籍企業。
2010年を達成期限とした「アクション21」は、①規制緩和、②小さな政府、③大型公共事業等を柱とする。また、多国籍企業にとって都合のよい世界秩序づくりに向けた「国際貢献」(9条改正)の動きも顕著となる。
財界・大企業の経営の自由を拡大する規制緩和は、耐震偽装・賞味期限切れ商品の販売といった経営者サイドのモラルハザードを生み、さらに多国籍企業の強化に「必要」な金融ビッグバン、労働ビッグバンなどを行っていく。
「小さな政府」論は、具体的には企業の法人税・社会保障負担の軽減をすすめ、それを消費税で穴埋めしていく「直間比率の変更」を課題とする。
公共事業については、「首都移転」が提示され、少なくとも96年段階では「小さな政府」と大型公共事業推進とが両立できるとされていた。
いくつかの修正はありながらも、この豊田ビジョンは、奥田ビジョン、御手洗ビジョンに基本線を引き継いでいく。その結果として、何が起こっているか。
1つは、貧困と格差の拡大。2つは、国民に対する際限のない「痛み」の押しつけ。社会保障抑制などで生み出された財源は大型公共事業や軍事費に支出されていく。規模は後退しているが、大型公共事業の継続は今日まで変わっていない。
これらを推進するうえで、財界が「『構造改革』の司令塔」として活用したのが経済財政諮問会議。これは「内閣の重要政策に関する基本方針その他の案件を派告げすることができる」総理大臣への恒常的な諮問機関。
11人のメンバーのうち4人は民間議員であり、うち2名分は財界の指定席となっている。過去の議事を整理したうえで重要なのは、いわゆる「骨太の方針」の原案が民間4議員によって提起されていること。
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