テキスト『変貌する財界』に入る。目次をながめ、序章・第1章・第4章の順ですすむことを示す。
「序章」に入る。いわゆる「格差社会」の実態は、97年をピークとした全国世帯の平均所得の低下という貧困化であり、その主な推進要因は、①賃金・収入の減少と、②社会保障の希薄化。
労働者の賃金は労働者派遣法「改正」等による非正規雇用(賃金は平均して正規雇用の60%)の拡大によって減少した。都市・農漁村の自営業者等については内外の規制緩和が収入を減少させている。これは政治の決定によるもので、自然現象ではない。
社会保障の希薄化は、2008年4月からの後期高齢者医療制度にもあらわれている。75才以上の「後期高齢者」は、先が短いのだから医療に金をかける必要はないと医療を抑制し、それでいながら75才未満とは別に新たな保険料徴集を徹底するとする。
本来の社会保障は、国民全体の生活水準向上をめざすものだが、「構造改革」はそのこと自体を否定した。これもまた政治の決定によるものであり、以上の2つの決定の背後に、財界の強い影響力がある。
日本経済団体連合会は財界の意思決定・実行機関、経済同友会は調査・研究・提言機関、日本商工会議所は地方企業を束ねる機関としての役割分担をもつ。日本経団連の政治に対する影響力は、政策と金の力による。
第1章は日本経団連の最近の変貌を見るもの。①少数巨大企業への経済力の集中、②その主流が自動車・電気機械・通信などの多国籍企業となり、しかもそれはアメリカはじめ海外市場依存度が高い特徴をもち、③加えて発行済株式の外資保有比率も高くなっている。
全体として日本経団連は、日本の景気よりもアメリカの景気への関心を高めながら、同時に日本市場を活動の場とする日米大企業の共同利益を追求するものへと変化している。
第2章は日米関係の変化を見るもの。アメリカとの関係は貿易をつうじた摩擦と調整の繰り返しの段階から、90年代には双方の資本結合の進展による「協調」の段階へと大きく転換する。
他方、東アジアへの企業進出もすすみ、それら地域の政治的不安定への対処を軍事力に求める衝動を強めている。
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