簡単な復習から、テキスト『問いかける資本主義』に入る。
「はじめに」で本書の目的を確認。「奥付」を読んで本文へ。
「序章・世界をまきこんだ最悪の『大恐慌』」は、現代の世界経済危機を、19世紀末大不況、1929年世界大恐慌に匹敵するものとし、そこにIT革命を土台にもって金融肥大化のもとでの恐慌という新しい特徴をみる。
金融の本来の役割は実体経済(生産と流通)の支援だが、20世紀の終盤になり、「金融の自由化」にもとづく金融的利得の独自の追求が拡大する。これがもたらした金融バブルとその破綻が、実体経済における巨大な過剰生産を一挙に露呈させた。
オバマ政権の金融規制改革法案は、ヨーロッパにとってはある種常識。そこには新自由主義型とEUの「社会的市場経済」型との資本主義の相違があらわれている。ただし、市場経済の同一面により、ヨーロッパにも金融危機は強くあらわれた。
「第1章・『19世紀末大不況』」
アダム・スミス(1723-90年)が、生産者による自己利益の追求による社会の最大限の幸福の達成を「神の見えざる手」によるとしたのは1776年(『諸国民の富』)。
それは産業革命が開始されたばかりの、若い資本主義。
しかし、機械制大工業の成立とともに、1825年から周期的な恐慌が開始される。それは「過剰生産」に突き進む生産力の飛躍的拡大にもとづくもの。
後にディビッド・リカード(1772-1823年)は、恐慌の影をおびえるようになり、カール・マルクス(1818-83年)は周期的恐慌のメカニズムの解明を、経済学研究の最大の柱に位置づけていく。
ただし、現実の経済政策は「神の見えざる手」とそれにもとづく「小さな政府」を前提した。
その破綻が誰の目にも明らかになるのが、1929年の世界大恐慌。ジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946年)は、資本主義の賢明な管理の必要を解き、したがって「大きな政府」を主張した。
1970年代には「大きな政府」の財政赤字が大問題になるが、その後、アメリカの経済政策は再び、かつての「神の見えざる手」に帰る。それが「新」自由主義。
2008年以降の経済危機は、その市場万能論と「小さな政府」論の再度の破綻を意味している。さて、それが現在の人間社会に問いかけているものは何か。
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