以下の内容で講義。
①日本経済の現状-「失われた10年」
G7各国の1997~2007年比較(08年以降は世界同時の経済危機)
〔GDP伸び率〕 カナダ73.7%、アメリカ69.0%、イギリス68.5%、フランス49.6%、イタリア47.3%、ドイツ26.8%、日本0.4%
〔賃金の伸び率〕 イギリス73.4%、カナダ73.2%、アメリカ68.4%、フランス49.5%、イタリア44.8%、ドイツ16.6%、日本-5.2%
1997年~2007年、日本の資本金10億円以上の大企業の経常利益は、15.1兆円から32.3兆円へ、17.2兆円増
同じ期間に、日本の賃金総額は、279兆円から262.1兆円へ、17.9兆円減
「富と貧困の対立」(マルクス)
各人の賃金の抑制、正規雇用者の減少、非正規雇用者の増加(日本の全労働者の1/3を超過)
②効果が小さい日本の貧困対策
税と社会支出が相対的貧困率に与える効果
市場所得の貧困率(上)、可処分所得の貧困率(下)
③国家財政はどうなっているか
巨額の財政赤字
上から、所得税・法人税・消費税
所得税最高税率引き下げ、証券優遇税制など
④「構造改革」という名での経済・社会改革
1980年代、アメリカ多国籍企業・銀行が活動の自由を世界各国に求める(特に「金融の自由化」を推進)
1986年「前川レポート」、90年「日米構造協議」、93年「日米包括経済協議」
97年「6大構造改革」(金融改革が目玉)、2001年「聖域なき『構造改革』」、「大企業が潤えば、いずれ国民も潤う」「国民はしばらく痛みに耐えよ」
ソ連崩壊(91年)によるアメリカの新自由主義政策の国際的展開
アメリカ資本の日本進出の拡大、法制度(大店法、労働者派遣法)・企業制度(財務の決算方法、企業年金)・経済制度(規制緩和、郵政民営化)などの変更要求、94年からの「対日規制改革要望書」
日本財界の中心勢力が土建から製造業多国籍企業に移行(大型公共事業より法人税減税、労働者の人件費削減・非正規雇用者の増大を)
〔社会保障の抑制を推進〕「今の社会システムの問題点は、困ったことがあったら人にねだれ、人からくすねろ、という世界になっていることです。『所得再分配』という言葉を使って、制度として人のものを強奪することを正当化するシステムです」
「そこに・・・集団的なたかりみたいなものが所得再分配という名のもとに、税にまとわりついて生まれてくる」
〔失業者を救済するのでなく攻撃する〕「一度失業したらもう仕事はありませんよね。ない理由は簡単で、役に立たないからですよ」 ※実際には有効求人倍率は0.5~0.6程度、求人の数が少ない、学生も就職難
〔低賃金労働者の増加を推進〕「失業問題を拡大させないようにしながら、雇用面でのリストラをすすめる・・・。その解決策として考えられるのは、やはり給料を抑えるという方法でしょう」
〔あげるのは消費税〕「法人税は、企業の国際競争力を失わせることになるので引き上げられません。個人の所得税もフロンティアの時代にあっては引き上げるのは無理です。そうすると、消費税を上げるしかありません」
〔全員に等しく税金を〕「私は人頭税というのが理想の税だと思うんですね」「皆同じ金額をかけるんです。国民一人ひとりの頭数にかけるわけですから、これほど簡単なものはないですね」
⑤国民の不満による民主党政権の誕生
1955年、自民党(自由民主党)結党、以後長期に渡る単独政権
1993年、はじめて「非自民」政権、以後、他党との連立で国会の過半数を握り政権に復帰
2000年代後半からの急速な支持の喪失、「構造改革」による国民生活の急速な悪化
2009年9月、民主党・鳩山政権の成立、55年以後はじめての本格的な政権交代
自民党の後退に危機感をもった経済界(日本経団連)、「二大政党制」の模索
2003年民主党結党(自由党と民主党の合同)
経済界が企業献金でコントロール、自民との「二大政党制」を(「構造改革」、消費税増税、憲法改定を競わせて)
自民党政治に対する国民の批判の強まり
09年民主党は「国民生活第一」をかかげて政権に
鳩山政権・菅政権の迷走の始まり、そもそも民主党には政党としての基本プログラムが存在しない
⑥鳩山・民主党政権は何をしたか
2009年総選挙で「国民生活第一」
09年9月、3党連立(民主党・社民党・国民新党)合意文書から
①子育て、仕事と家庭の両立を支援する
②年金・医療・介護など社会保障制度を充実する
③低賃金の非正規雇用者(派遣労働者)をへらし正規雇用者をふやす
④沖縄・普天間基地の移設先は県外に、できれば国外に、等々
「廃止」といっていた後期高齢者医療制度(75才以上1300万人)は存続、医療費抑制のため
保育制度改革の方向、①利用者と事業者の直接契約に、②企業が参入できるよう最低基準を緩和、 ③保育料は利用者補助方式に転換する
「廃止」するとしていた障害者自立支援法を延長(障害者が施設を利用するほどに高い利用料を支払うもの)
根底にある「自己責任」論、社会保障は「たかり」だという発想
「日本国憲法25条」 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
増加している無権利な派遣労働者(非正規雇用の中心)、400万人規模、低賃金、いつ解雇されるかわからない
民主党の「労働者派遣法改正案」は抜け道ばかり
①1年以上雇用の派遣労働者の状態は改善しない(製造業派遣の63%)
②登録型派遣も「専門26業務」の従事者(100万人)は改善しない(パソコンでグラフがつくれると専門業務)
2010年5月28日・日米安全保障協議委員会
「沖縄を含む日本における米軍の堅固な前方のプレゼンスが,日本を防衛し,地域の安定を維持するために必要な抑止力と能力を提供する」
「1800mの長さの滑走路を持つ代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する意図を確認」
訓練移転については「適切な施設が整備されることを条件として,徳之島の活用が検討」「日本本土の自衛隊の施設・区域も活用され得る」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/joint_1005.html
敗戦と米軍(連合軍)支配により、「鬼畜米英」からアメリカ追随への転換
1952年旧安保条約(極東の平和のため基地提供の義務、「大規模の内乱及び騒じょうを鎮圧」)
1960年新安保条約(日本と極東の平和のため基地提供の義務、「経済的協力」、軍事力の強化、「共通の敵に対処」、発効10年後以降はいずれかの「通告」で終了)
1996年日米安保新宣言(地球的規模での共同)
基地133ケ所、東京23区の1.7倍の基地面積(自衛隊との共用を含む)、70%以上が沖縄に
⑦鳩山政権から菅政権へ
2010年6月2日鳩山首相が辞任表明
6月4日菅首相
10年参議院選挙で、民主党の政権公約は自民党政治に逆戻り
(つづく)
質問は、①法人税引き下げと国際競争力との関係、②経済成長の停滞とバブル崩壊の関係について。
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