〔菅・民主党政権の特徴〕
6月2日鳩山首相が辞任表明、6月4日菅首相、7月参院選のマニフェスト
①「強い経済」-「規制改革」「法人税率引き下げ」「総理、閣僚のトップセールス」によるインフラ輸出、②「強い財政」-消費税増税を軸とする「税制の抜本改革」、③「強い社会保障」-「財源を確保して、持続可能な社会保障制度を構築」する
沖縄・米軍普天間基地問題-「日米合意に基づいて」
全体として自民党政治に逆戻り
〔背景にあった日本経団連の要望〕
日本経団連、1600人の大企業経営者、政策と献金で民主党・自民党に影響力
2010年5月の総会決議文書から
1.デフレ克服、自律的な景気回復および新たな成長に向けた挑戦-(2) 経済のグローバル化の実態を踏まえた法人実効税率の引き下げと競争政策の見直しによる競争力強化
2.豊かな国民生活の実現に向けた基盤強化-(1) 税制抜本改革と社会保障の安定財源確保
3.世界との連携強化と国際貢献- (7) 官民連携による海外インフラ整備の推進
日本経団連総会での米倉新会長就任挨拶
「経団連が取り組むべき課題」「第1は、企業活力による成長の実現」
「私は、企業が元気を出し、経済が成長して初めて、国民生活の向上、雇用創出、持続可能な社会保障制度の確立、財政の健全化といった諸課題への対応が可能になるものと考えております」
「構造改革」路線そのまま、サプライサイドの経済学、国民経済を無視した大企業利益の追求のみ
〔2010年参院選の結果〕
民主党↓31.6%(10参)、42.2%(09総)、39.5%(07参)、31.0%(05総)
自民党↓24.1%、26.7%、28.1%、38.2%
民主・自民計↓55.7%、69.1%、67.6%、69.2%
みんなの党↑13.6%、4.3%、-、-
公明党↑13.1%、11.5%、13.2%、13.1%
共産党↓6.1%、7.0%、7.5%、7.3%
社民党↓3.8%、4.3%、4.5%、5.5%
たちあがれ日本 2.1%、-、-、-
新党改革 2.0%、-、-、-
国民新党 1.7%、1.7%、2.2%、1.7%
〔「2大政党」離れのはじまり〕
民主急落、自民後退、二政党合計得票率の急速な交代→「二大政党」に依存しない政治の模索
みんなの党躍進、共産・社民後退→旧来の政治にかわる「新しい政治」がイメージされない到達点
2011年度政府予算案は10年度と基本的に同じ内容(4月から法人税5%削減)、国民は模索の道を進むしかない、決して安定していない民主党政権
2010年11月沖縄県知事選で民主党は「自由投票」(前回選挙では基地反対派の糸数氏擁立)、33.6万vs29.7万でのギリギリの勝利、勝った仲井真知事も「県外移設」をいわずにおれず
同じ日の宜野湾市長選は基地反対派が勝利
〔消費税増税を社会保障とからめる財界〕
日本経団連「豊かで活力ある国民生活をめざして」(2010年4月13日)-「消費税率を一刻も早く引上げ」「法人税への過度な依存を改め」
「セーフティネットの整備が進んでいる欧州諸国(の)・・税率は、15~25%の水準が標準・・・わが国(で)5%・・・は極めて特異」「2011年度から速やかかつ段階的に(たとえば、毎年2%ずつ引き上げ)、消費税率を少なくとも10%まで引き上げていくべき」 「2020年代半ばまでに消費税率を欧州諸国なみの10%台後半ないしはそれ以上へ」
2010年参院選では自民、民主、みんなの党、たちあがれ日本・・・消費税増税を主張
〔日本の消費税率は高くない(国際比較)〕・・・図
〔ヨーロッパの消費税の課税範囲は〕
消費税は貧富の格差を拡大する、生活の大変な人ほど負担が大きい
では、消費税率が高いヨーロッパで、どうやって貧富の差がおさえられているのか
1つは生活必需品にはかけないから、下はイギリスの例(標準税率17.5%)・・・図
〔EUの福祉財源は企業保険料と他の税〕・・・図
〔財政再建に必要なこと〕
負担能力に応じた税の累進性を回復する、法人税、高額所得者の所得税
無駄な支出をはぶく、軍事費、公共事業
安定的な経済成長による税収増へ、GDPの拡大は、純債務のGDP比を引き下げて、日本の財政に対する国際的な信頼を高める
経済成長には、国内消費の最大勢力である家計(個人消費)をあたためることが必要-基本は社会保障の拡充と労働者の賃上げ・正規雇用の拡大(家計重視の経済政策を)
〔世界の大きな変化の中で〕
19世紀末~20世紀前半、大国による植民地支配・帝国主義が頂点に、1917年、社会主義をめざす国の誕生、日本は「大日本帝国」の形成と拡大をめざした
20世紀後半、戦後の植民地体制の崩壊(インドネシア、ベトナム、中国などから)と自立した集団の形成、米ソの帝国主義・覇権主義政策(「冷戦」時代)の重石、日本は植民地を喪失、侵略と植民地支配への反省は曖昧のまま
91年ソ連崩壊、米ソ「冷戦」体制の終焉
〔ソ連崩壊以後の変化〕
①「社会的市場経済」をめざすEU型資本主義の発展(93年EU発足)、ドル支配の脱却をめざす単一通貨ユーロ(99年導入)
②アメリカ帝国主義の世界的な威信喪失、経済的な地位の低下、スマートパワー路線の模索
③BRICs、ネクスト11など新興諸国の経済的成長と政治的発言力の拡大、連帯の広がり
④「市場を通じた社会主義への道」を模索する中国、ベトナムの成長と世界的ネットワーク、「平和共存」
⑤「新しい社会主義」を模索する国の登場、ベネズエラ、ボリビア、エクアドル
世界の多様化、大国支配でない自立した各国
〔2050年の世界の国別GDP〕・・・図
〔構造変化への対応、アジアの力〕
〔アメリカ〕08年「2025年の世界」(米国家情報会議)、①「米国中心の国際秩序はほとんど姿をとどめていない」、②「中国とインドが多極化時代の新たな大国として米国と影響力を競い合う」「中国は今後20年間、他のどの国よりも影響力を強める」
〔EU〕ファンロンパイ初代大統領、英仏独伊有識者アンケート-重要なEU以外の相手国は中国39%、アメリカ27%、インド12%、日本9%
〔アジア〕ASEAN共同体(2015年)、TAC(第一条「締約国の国民の間の永久の平和」、第二条「武力による威嚇又は武力の行使の放棄」、EUをふくめ54ケ国・世界人口の70%、アメリカも加盟
〔中南米カリブ海諸国機構の設立〕
2010年2月23日、32ケ国首脳会議(アメリカ・カナダ・ホンジュラス以外)合意
宣言の第一事項、 「中南米カリブ海諸国を統合する独自の地域として、中南米カリブ諸国共同体を設立する」、詳細は2011年ベネズエラ、12年チリの首脳会議で
国際法と国連憲章の原則の尊重にもとづく公正、平等な国際秩序の構築をめざす
「米国がいるところでは、民主主義は保障されない。社会的公正をともなう平和も保障されない」(ボリビアのモラレス大統領)
他に、この地域には、活発な「新しい社会主義」論議(ベネズエラ、ボリビア、エクアドル)も
〔日本社会の歴史的な弱点〕
①「開国」の圧力のもとでの資本主義化(富国強兵の軍事的資本主義)、ブルジョア民主主義を求める力の弱さ
②アメリカによる占領支配のもとでの憲法体系と安保体系の対立、戦後民主主義(主権者・人権意識)の脆弱性
③敗戦による植民地喪失と侵略への無反省(戦前・戦後の連続面)、 「脱植民地化」に向かう戦後世界の中での帝国主義アメリカへの追随(1952年サンフランシスコ講和条約の一面性)
④独自の外交戦略がもてない支配層、日米安保条約体制のもとで
〔課題は「社会」の思想的成熟〕
個々の経済・社会政策だけでなく「どういう日本社会をつくるのか」という大きな思想が必要な時代
(社会権の思想)「どういう理由であれ、生活に困り、食えなくなった人が死ぬ、それを見すごす社会でいいのか」
(平和の思想)侵略と植民地支配への反省、平和憲法をいかした平和外交での世界への貢献、特に北東アジアの平和体制づくり
(独立の思想)アメリカ依存でなく対等な関係を、東アジアに平和と成長の共同体を
これらの思想を日本社会全体が身につけていかねば
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