<就職性差別>大阪の男性が提訴 派遣会社に賠償求める
人材派遣会社の事務職の求人に応募したら、男性であることを理由に採用を断られたとして、大阪府内の専門学校生(29)が大手派遣会社5社を相手取り、大阪簡裁などに1社当たり15万~5万円の賠償を求めて提訴していたことが分かった。大半の社が請求を認めたり、和解に応じた。性別を理由にした就職差別を巡る男性の訴訟は極めて異例。国会でも男性への差別禁止を明記した男女雇用機会均等法の改正案が審議されており、訴訟は潜在する「男性差別」への警鐘になりそうだ。【前田幹夫】
訴えなどによると、専門学校生は今年2~3月、インターネットで派遣5社の求人募集を見て「特許事務所の英文書類ファイリング」「商社の事務職」などの求人に応募。募集要項に性別の条件はなかったが、派遣会社から「派遣先が女性を希望している」「女性向けの仕事」などと断りのメールが届いた。
専門学校生が「性差別ではないのか」と抗議したところ、各社とも口頭や文書で謝罪したという。しかし、「社員教育が徹底していなかった」などとするケースもあり、同法違反や精神的苦痛を理由に3月に提訴した。
これに対し、1社が請求を受け入れる答弁書を提出、請求額の15万円を支払った。他の4社のうち3社は「同法は男性を保護していない」などと争う姿勢を見せる一方、「会社側にも不手際があった」などと和解に応じた。解決金は8000~3万円。残る1社も和解に応じるとみられる。
厚生労働省は、性別を理由にした就職差別を禁止する指針を出しているが、同法は女性差別をなくす趣旨で制定され、「男性差別」を直接規制していない。このため、事務職、看護師などの職種で、男性であることを理由に採用しない事業者は多いという。
同法は現行では採用や募集で「女性に対する差別」を禁じているが、改正案では「性別を理由とする差別の禁止」という表現に替え、男性差別も明確に禁止。悪質な場合には20万円以下の科料を課す罰則も設けた。
専門学校生は「事務関係の資格取得に役立つと思い求人に応募しただけ。派遣会社側が基本的的に非を認めたため和解に応じたが、男性でも女性でも性別で就業機会を奪われるのはおかしい」と話している。
厚労省雇用均等政策課の話 男性差別の存在は把握しているが、訴訟は聞いたことがない。本来、男女に関係なく性別を理由とした採用、募集はあってはならない。
▽戒能民江・お茶の水女子大教授(法女性学)の話 欧米諸国は法律で男女に関係なく性差別を禁じている。日本では女性差別だけが強調されてきたが、性差別そのものの解消のためには、女性だけでなく男性も声を挙げることが重要で、今回の訴訟は意義がある。(毎日新聞) - 5月14日3時10分更新
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