毎日ながめている「長久啓太の『勉客商売』」で教えられた記事である。
こうまで「ワーキングプア・非正規雇用」問題が深刻になると,
地方紙がもつ事実への誠実さを相当にうすれさせている大手新聞社でさえ,
このような記事を書かずにおれないということか。
「社説:フリーターの権利 自ら守り始めた青年ユニオン」(毎日新聞,11月24日)
「牛丼チェーン「すき家」で働くアルバイト6人が労働組合に加入し、団体交渉の結果、解雇の撤回と割増賃金の支払いを獲得した。アルバイトが加入したのは30歳以下のフリーターが組織する首都圏青年ユニオン(以下、ユニオン)だ。行政にも既存労組にも守ってもらえなかったフリーターの権利を、労働組合を結成することで自ら守り始めた。
ユニオンの結成は00年12月。首都圏の緊急病院の夜間受付アルバイトをしていた大学の非常勤講師や大学院生約20人が結成した労働組合を、あらゆる業種のフリーターに門戸開放した個人参加の組合に発展させる形で発足した。
現在、組合員は270人、組合費は無職の月額500円から月収30万円以上の3300円まで、収入に応じて段階がある。
当初は、安い組合費と少ない組合員で活動は鳴かず飛ばずだった。04年6月に大学や高校の教職員、弁護士などが呼びかけ人になり、「首都圏青年ユニオンを支える会」が発足した。会の経済的支援を得て組合専従者を置けるようになってユニオンは活性化し、組合員は増加した。団体交渉の戦術は、上部団体の東京公務公共一般労組のベテランが教えた。
多くのフリーターは劣悪な労働環境に置かれている。「残業代の未払い、有給休暇の未消化、社会保険・雇用保険の未加入が違法の3点セット」と、書記長の河添誠さんは言う。使用者は団体交渉を拒めないし、違法行為は明白なので勝率は高い。この2年の組合員の増加を河添さんは「もはや腰掛けではすまない。この職場で生活を安定させないと」というフリーターの覚悟の表れと見る。
ユニオンは本人に労働法を教え、「団体交渉申し入れ書」を作成させ、会社に送らせる。当事者意識を持たせ、ユニオンに依存させないためだ。
ユニオンの活動と成長はインターネットなしでは不可能だった。職場も労働時間もバラバラな組合員をつなぐのはメーリングリストだ。メールで集合時間と場所を連絡し、その場で作戦会議を開いて団体交渉に臨む。参加は自由で、組合員は使用者と対等に交渉できることに驚き、権利を自覚する。
メーリングリストでユニオンのすべての会合の経過が連絡されるので、知らないところで方針が決まるという既存組合にありがちな疎外感がない。また、個人加入の組合では自分の争議が解決すると脱退しがちだが、メーリングリストにはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の機能もあるため、脱退者は少ない。
ユニオンの限界ははっきりしている。組合員の構成上、賃上げ交渉とストライキはできない。遠隔地の団体交渉にも応じられない。「ユニオンはブルーシート」と河添さんは言う。フリーターの現状は最低限の権利も守られない泥沼状況にある。そこに、せめて立っていられるシートを敷くのだと。
いろいろ限界はあるが、時代の要請と技術革新が生んだ新しい労働組合の萌芽(ほうが)かもしれない。」
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