米下院の「慰安婦」決議採択を推進したホンダ議員が、「中国系反日団体」と強い結びつきをもっていたとの記事である。
それは国際政治の力学をとらえるうえでは、ひとつの大切な事実であろうが、しかし、それをいうなら日本政府もまた下院議員への活発なロビイングを繰り返してきた。
なにより肝心な問題は、決議推進の背後にどのような団体があったとしても、「慰安婦」問題をめぐる史実への評価がそれによって変わるということはないということである。
ホンダ議員、慰安婦決議採択直後に明言 中国系団体が主導(産経新聞、8月3日)
【ワシントン=古森義久】米国下院は慰安婦問題で日本を糾弾する決議を採択したが、この決議を主導したマイク・ホンダ議員(民主党、カリフォルニア州選出)は採択直後の記者会見で、最初に在米の中国系反日団体への感謝を述べ、同団体が長年にわたり慰安婦問題に関する同議員の日本非難の活動にとって最大の推進力となってきたことを明言した。
ホンダ議員は7月30日の同会見で冒頭、「感謝」の対象として真っ先に在米中国系団体「世界抗日戦争史実維護連合会」(以下、抗日連合会)の名をあげ、次のように語った。
「1999年、この団体がアジアで起きたことの映像展示会を開き、その一つが慰安婦問題だった。そして同団体の指導と主唱が私たち議員事務所、私個人にとっての最初の(同問題への)かかわりとなった。同団体の主唱こそが私に情報と推進力を与え、カリフォルニア州議会で共同決議を採択させた」
同州議会での決議は慰安婦問題などで日本政府に謝罪や賠償を求める内容で、賠償を除いては今回の連邦議会下院での決議と同趣旨だった。州議会での決議案は抗日連合会の幹部連がホンダ議員と「ともに書き、共闘で成立させた」と明言していた。同幹部連は以後もホンダ氏が連邦議会下院選に出る際に政治献金などで全面支援し、2001年から今回まで合計4回の慰安婦決議案提出でも背後の推進力となったことを同様に地元マスコミなどに明かしてきた。
連邦議会での同決議案推進のロビー工作には韓国系の「ワシントン慰安婦連合」などという団体が表面に出ていたが、ホンダ議員は決議案採択後の会見では同団体に言及もせず、真の推進役が中国系の抗日連合会であることを期せずして明示した。また決議案の審理中もホンダ議員は中国系とのかかわりを語ることはなかった。
ホンダ議員は同会見で「中国政府から指令されてはいない」と強調した。
しかし抗日連合会は1994年にカリフォルニア州で結成され、幹部はみな中国系の米人や永住権保持者だとはいえ、2005年春には中国政府の意向を受ける形で日本の国連安保理常任理事国入りに反対する署名を4200万人分も集めたと発表したほか、02年には中国当局の協力を得て上海で第二次大戦の賠償に関する国際法会議を開くなど、中国との密接なきずなを明示してきた。
ホンダ議員の選挙区に本部を置く抗日連合会はさらに1997年には南京事件に関する欠陥書の「レイプ・オブ・南京」(アイリス・チャン著)の宣伝や販売に総力を投入したほか、昨年には「クリント・イーストウッド監督が南京大虐殺の映画を作る」というデマの発信源ともなった。
他方、今回の慰安婦決議では日本側の最近の動向に対応して米国議会が自主的に批判の動きをとり、韓国系団体が同調するという構図が提示されてきた。だがホンダ議員が中国系の抗日連合会こそ日本糾弾の真の推進役であることを初めて明らかにし、しかもその団体が中国当局の意向を反映し、恒常的に歴史問題での日本非難の構えを取ってきた実態と合わせて、いわゆる慰安婦問題での真実の構図は従来の表面上の印象とはまったく異なることが証されたといえる。
次は米兵捕虜補償 中国系反日組織 ホンダ議員と会談(産経新聞、8月5日)
【ワシントン=山本秀也】米下院で慰安婦問題をめぐる対日非難決議採択を主導したマイク・ホンダ議員(民主党)が、先月30日の決議採択後、「世界抗日戦争史実維護連合会」(GA)など、米国、カナダの中国系反日組織の主なメンバーと会談していたことが分かった。組織側は、第二次世界大戦中の米兵捕虜に対する補償問題を新たな対日活動の目標として取り上げる方針を示したほか、カナダ国会での慰安婦決議案採択も急ぐ構えだ。
ホンダ氏は決議採択後の記者会見で、採択実現に向けた同連合会の支援に「感謝」を表明していたが、決議後の連携維持を示す会談はこれまで確認されていなかった。
米国で発行される中国語紙「世界日報」によると、会談は国会内のホンダ議員の事務所で行われ、同連合会世界総会(サンフランシスコ)の張昭富氏らのほか、カナダで連帯活動を進めるジョセフ・ウォン(王裕佳)氏が参加した。
出席者はホンダ氏への謝意を伝え、決議採択を「大戦の史実を示す活動にとり重要な一里塚だ」と評価。ワシントンで活動する蔡徳●氏は、米兵捕虜に対する補償問題を筆頭に、各地の組織と連携して「日本の戦争犯罪」に関する案件に取り組む考えを示した。
さきの大戦中の日本企業による米兵捕虜の強制労働は、過去にも元捕虜による米国内での対日訴訟やこれを支援する法案が米下院に上程されているが、「サンフランシスコ講和条約で解決済み」とする日米両政府の了解や、連邦最高裁の棄却判断(2003年)で沈静化していた。
一方、カナダの中国系組織は棚上げ状態にある同様の決議案の採択を促す署名活動を展開、同国会での採択を目指す。「日本は戦後のドイツにならい戦争犯罪を反省すべきだ」と訴えており、米下院での決議を弾みにした活動を展開する構えだ。
●=木へんに梁
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