時価の株式で企業買収を行うことのできる「三角合併」の第一号である。
これによってシティグループは、多額の現金を使うことなく日興コーディアルグループを手に入れることができる。
ここを足掛かりにシティグループは日本国内および東アジアに本格的な事業展開を行うということのようである。
日本国内では銀行窓口での保険販売をめぐる責任分担論議が行われているようだが、ことはユニバーサルバングの容認へと向かって進んでおり、本当の出番を待つのはアメリカ資本ということだろう。
日本の金融市場は売り渡されている。
国内初の「三角合併」 米シティ 日興を完全子会社化(読売新聞、10月3日)
米大手金融グループのシティグループと、日興コーディアルグループは2日、シティが日本子会社を通じた「三角合併」方式で日興株をすべて取得し、完全子会社にすることで合意した。今年12月19日に開く臨時株主総会の承認を得て、2008年1月をめどに、シティ株と日興株を交換する計画だ。今年5月に解禁された「三角合併」で、事実上、初の事例になる。
シティグループは今年3月、日興と業務・資本提携を結んだ。その後、株式公開買い付け(TOB)などで日興株を取得し、現在、議決権比率で日興株の約68%を保有している。残りの株式の取得に向け、自社株を買収の対価とする「三角合併」方式を選択したのは、現金で買い取るより費用負担が小さいとの判断があると見られる。
日興を完全子会社化した後、日本をはじめとするアジア市場での事業拡大を加速する考えだ。
株式交換は、日興株1株あたり、日本円で1700円相当のシティ株を割り当てる。現在の株価と為替相場で計算すると約0・3株となる。シティは、日興の株主に渡す約5300億円相当の自社株を新規発行などで調達すると見られる。
株式交換で完全子会社になった時点で日興株は上場廃止となる。代わりに、日興株主は、現在はニューヨーク証券取引所に上場しているシティ株を手にすることになる。
シティは、株式交換を実施する08年1月までに東京証券取引所に上場する方針で、既に上場申請をしている。シティの東証上場が計画通り進めば、日興株主は東京株式市場でシティ株を取引することができる。
三角合併
昨年5月に施行された会社法に盛り込まれた企業買収の仕組みで、今年5月に解禁された。合併の対価として現金ではなく、買収する側の企業の親会社の株式を使えるようになった。株式の時価総額の大きい外国企業が日本企業の買収をしやすくなるとの指摘も多い。
米シティ、日興を三角合併方式で完全子会社に(朝日新聞、10月2日)
米金融最大手のシティグループは2日、約68%の株式を保有する日興コーディアルグループの残りの株式を、来年1月に「三角合併」の手法を使ってすべて取得し、完全子会社にすると発表した。外国企業の投資を呼び込むため、今年5月に解禁された三角合併方式を活用し、外国企業の株式を買収の対価に使う第1号になる。世界最大級の金融グループであるシティが活用を決めたことで、三角合併を使った外資の日本企業買収が続く可能性がある。
今回の統合の仕組み米シティグループ
シティは現在、日本に設立した持ち株会社が日興株の約68%(議決権ベース)を保有している。今回の株式取得は、残りの株式を持つ日興の株主と、シティ本体の株式を交換する形で全株を取得し、日本の持ち株会社の100%子会社にする。
2日の日興株の終値は前日比17円高の1462円だが、交換では日興株を今春の株式公開買い付け(TOB)で設定した価格と同じ1株あたり1700円と評価してシティ株と交換する。交換する株式の総額は約5300億円になる見通し。交換比率は今年12月から来年1月の間に決定する。
三角合併は本来、日本企業と外資の日本法人を合併させることを想定しているが、シティは日興を完全子会社にすることにとどめる。今後、日本での持ち株会社の傘下に、日興に加えシティバンク銀行などのグループ各社を収める可能性もあり、銀行・証券を含めた金融ビジネスを一体的に進める体制を整えるとみられる。
シティは株式を交換する前に東京証券取引所に上場する見通しで、シティ株を割り当てられた株主も、日本市場でシティ株を売買できる。シティの完全子会社になることで日興株は上場廃止になる。東証は2日、日興株を投資家に廃止の可能性を注意喚起する「監理ポスト」に移した。
2日に記者会見した日本の持ち株会社のダグラス・ピーターソン最高経営責任者(CEO)は三角合併方式を活用した理由について「日興株をスピードを持って円滑に取得できる点や株主の利点を考えて最適だと判断した」と説明した。株式交換により、多額の現金を使わずにすむ利点もある。
日興を完全子会社にすることで、シティは日本での事業拡大を本格化する。国内のシティバンク銀行の支店数を現在の約30店から数年間で倍増する方針で、日興の110支店と合わせると販売網は全国に広がり、大手金融グループに次ぐ規模になる。個人向けの金融商品の販売やクレジットカード業務を拡大させる。
シティは04年に富裕層向け部門の違法行為で金融庁から行政処分を受け、同部門が日本から撤退して以来、日本での事業拡大が課題だった。一方、日興は昨年12月に不正な利益の水増しが発覚し、当時の社長、会長らが引責辞任し、顧客離れが起きた。信用補完のためTOBによってシティの傘下に入った。
銀行保険窓販の全面解禁、自民党内の反対で先送りの懸念(朝日新聞、10月3日)
[東京 3日 ロイター] 自民党は、銀行での保険販売の全面解禁をめぐって本格議論に入った。予定通り12月22日に全面解禁しても問題はないとする金融庁の報告を受けて、2日の会合で銀行の意見に賛成する議員から、規制緩和を進める観点に立って全面解禁を支持する声が多く出たが、3日午前の会合では、生命保険の意見に賛成する議員から反対論が噴出した。「生保レディ」を柱とする販売体制の見直しに追われる生保業界は、銀行の販売責任を明確にすべきとの新たな論点を持ち出して慎重論を展開している。銀行と保険の責任分担の調整が長引けば、12月解禁の関連政省令を整えるためのリミットとされる10月末に間に合わず「時間切れ」で全面解禁が先送りされる可能性も出てきた。
<金融庁、12月の全面解禁に支障ない>
銀行の保険窓販は2001年4月に火災保険や海外旅行傷害保険などを先行解禁し、2005年12月に一時払い終身保険や一時払い養老保険など貯蓄性の商品を追加で解禁した。
今年12月に全面解禁されれば、医療・介護保険、自動車保険などで、すべての保険商品が銀行で販売されることになる。これに対しては、銀行が融資先に「圧力販売」を仕掛けたり、預金情報を流用して販売するなどの弊害を懸念する声が浮上したことから、自民党は2005年に「弊害防止措置が有効に機能しなければ全面解禁を認めない」と決議した。金融庁は、融資先企業に保険を売ることを原則禁止した弊害防止措置を設けたうえで、2年間、銀行の保険販売の状況を調査することにした。
金融庁は今年9月18日の金融審議会(首相の諮問機関)で調査結果を報告した。それによると、2005年12月以降に銀行の保険窓販に関して寄せられた苦情は127件と保険全体の0.5%にとどまった。このうち圧力販売の苦情は17件。情報保護など不祥事の届け出は91件で保険業界全体の2.2%にとどまった。金融庁はこの調査結果によって「弊害防止の措置は有効に機能している」と結論付けて、予定通りの全面解禁に問題はないと表明した。
<生保、責任分担論を展開>
生命保険協会の岡本国衛会長(日本生命社長)は9月21日の会見で、保険窓販の全面解禁が、医療保険や保障性商品など支払い請求や苦情処理などの販売後のフォローが重要な商品だと指摘した上で「銀行が販売だけをして、あと(のフォロー)は保険ということだろうか。顧客によっては銀行がやってくれると思うのではないか」と述べて、銀行と保険の販売責任や賠償責任の分担を明確にするよう求めた。
内閣府令では12月の全面解禁が明記されており「弊害防止措置さえクリアすれば予定通りの解禁に問題はない」と金融庁は解釈している。生保業界が、銀行・生保の責任分担論を持ち出したことには「今ごろになってという感じもする」(幹部)と戸惑いの声も広がる。金融庁の佐藤隆文長官は1日の定例会見で「12月の全面解禁には大きな支障はない」との認識を示した。
もっとも生保業界でも、圧倒的な販売力を持つ銀行窓販に期待を寄せて「本音では賛成」(中堅生保)との声も出ており、一枚岩ではない。岡本生保協会長も、銀行窓販の提供商品の選定にかかっており、解禁を前提に準備を進めていることを認めた。生保業界で最も強硬に反対しているのは全国生命保険労働組合連合会(生保労連)で、銀行窓販の拡大による雇用不安が背景にあるのではないか、との見方が関係業界の関係者から出ている。
<自民党議員、弱者配慮も>
2日の自民党財務金融部会・金融調査会の合同会議では、手数料収入の拡大を見込む銀行業界から「スケジュール通りの解禁を望む」(全国銀行協会)との要望が提出された。出席した関係議員は若手を中心に、規制緩和の観点から賛成意見が多数を占めた。大野功統・金融調査会長によると「予定通り全面解禁したらどうかという意見の方が多かった」という。
一方、3日の合同会議では、生保・損保の関連団体から意見を聴取した。生保協会の岡本会長は「銀行は売りっ放しの可能性がある」と指摘して、金融庁の監督指針に銀行のアフターフォローの業務を明記すべきと要望した。生保の営業職員で構成する生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会は自民党の支持団体とされるが「銀行が販売する生保商品のこれ以上の拡大に反対する」と表明した。
出席した議員は「延期ではなく、解禁そのものに反対」との声も出たほか、金融庁の調査結果について「聞き取り調査では実態が分からない。無記名のアンケートをやるべきだ」として、信ぴょう性に疑問を呈する声が出た。ベテラン議員が「参院選で自民党が負けたのは弱者配慮が足りなかったからだ。この問題は、保険が弱者で銀行が強者だ」と語る場面もあった。田中和徳・財務金融部会長は記者団に「昨日のトーンと変わって、反対が相次いだ」と述べた。
<最終判断は10月中>
大野金融調査会長は2日の会合後、「銀行のアフターフォローの問題は議論する課題だ」との見解を示した。3日の会合後には「弊害防止の調査のあり方に信ぴょう性がないとの意見があるので、これを議論しなければならない」と語った。来週にも、3回目の合同部会を開き、学識者から意見を聞くとともに、1)銀行と生保の責任分担、2)金融庁の調査結果の位置づけ――などについて議論される見通しだ。
金融審議会は3日午後の作業部会で、保険窓販の全面解禁で意見を改めて聞く。金融庁は12月の全面解禁の関係政省令を整えるため、最終判断は10月中に行う必要があるとの見方を示している。自民党の合同部会は「精力的に議論して2週間で方向性を出したい」(大野金融調査会長)考えだ。
ただ、金融庁の調査の結果を見直したり、銀行と保険の責任分担のルール作りを新たに議論しようとすれば、リミットまでに結論が出ずに、全面解禁が延期に追い込まれる可能性も出てきている。 (ロイター日本語ニュース 村井 令二)
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