社会保障を切り捨てながらの消費税増税。
その背後には、大企業減税、軍事費確保にくわえて、さらに公共事業費の再拡大まであるらしい。
いずれにせよ、国費を大企業のためにのみ用いる「官金私消」の現代版。
国民が主権者として、もっとハラを立てなければ。
こんなのあり?! 財界の“試算” 軍事費増・企業減税は手つけず 消費税は増税(しんぶん赤旗、10月26日)
「二〇二五年に消費税17%が必要」などの数字がひとり歩きしています。火元は、十七日の経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)に、御手洗冨士夫キヤノン会長(日本経団連会長)ら民間議員四氏が提出した試算です。しかし、よくみると、おかしなことが次々と…。
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社会保障費だけ抑制
この試算は御手洗経団連会長も「極端なモデルを置いて計算している」(二十二日の記者会見)と認めるものです。
経済成長率などいろいろなパターンを想定していますが、結論は二〇一一年度で最大六・六兆円の増税が必要で、二〇二五年度には最大三十一兆円の増税が必要になるという試算です。
増税分をすべて消費税で賄うとすれば、二五年度には消費税を12%引き上げて17%にする必要があることになります。
増税の名目は「財政再建」と「社会保障」です。ところが、これだけの増税を想定して、社会保障が充実されるのかといえば、そうではありません。「高負担、低福祉」のシナリオです。
社会保障については、年金、介護保険、医療の改悪がすすみ、舛添要一厚生労働相さえ「社会保障の歳出抑制に、ほぼ限界がきている」(十七日の経済財政諮問会議)と言わざるをえない現状です。ところが、今後も一一年度まで社会保障費を毎年二千二百億円ずつ抑制し続け五年間で一・一兆円(国と地方で一・六兆円)抑制する計画です。
二五年度時点ではどうでしょう。厚生労働省の見通しでは、社会保障の給付費は国内総生産(GDP)比で19・0%です。〇三年度の18・6%と比べほとんど変わりません。制度改悪による給付削減効果を見込んでいるからです。日本のこの水準がいかに低いかは、スウェーデン31・9%、フランス29・1%、ドイツ28・4%(いずれも〇三年、厚生労働省資料)と比べればわかります。
「2つの聖域」そのまま
社会保障の給付は低い水準に抑えこむ計画なのに、なぜ巨額の増税が必要だとの試算結果が出てくるのか。これには、カラクリがあります。
「財政再建」や経済成長率の設定の是非をめぐる議論は自民党内でも盛んです。もっと大きな問題は「二つの聖域」にメスを入れる姿勢がまるでないことです。軍事費と大企業減税です。
いまでも五兆円規模の軍事費は、一一年度までは「名目伸び率ゼロ以下」(政府の「骨太の方針2006」)が方針。要するに五兆円規模を維持するということです。米軍再編経費については「検討し、必要な措置を講じる」(同)と別枠扱いです。一二年度以降について試算は、軍事費や公共投資は「名目成長率で増加」することを前提にしています。
これだと、たとえば軍事費は二五年度に八兆円規模に膨れ上がりかねません。公共投資も「削減」から「増加」への転換です。
法人税増税は対象外
一方、歳入をみると、必要な増税は「消費税と所得税半々」とされています。庶民増税ですべて賄うという発想で、大企業などが納める法人税は、はじめから増税の対象外にされています。いかにも財界代表らが提出した身勝手な試算といえます。
日本経団連は〇八年度税制「改正」提言でも、消費税については「当面2%程度、二〇一五年度までにはさらに3%程度の引き上げ」を主張。その一方で、地方税を含む法人実効税率は現行の約40%から30%をめどに引き下げることをはじめ、連結納税制度など企業減税の拡充を求めています。
自民党財政改革研究会の与謝野馨会長(前官房長官)も「消費税の議論を正面からせざるを得ない」とし、「日本が経済で競争している国は法人税率を下げる傾向にある。その時、日本の法人税率を上げる議論はできないだろう」(「読売」二十日付)と、はじめから大企業に負担を求める考えがありません。
資本金十億円以上の大企業はバブル期の二倍近いもうけ(経常利益)をあげているのに、税負担はわずかながら減っています。ゆきすぎた大企業減税のためです。日本共産党が提案するように、法人税率を十年前の水準(法人税37・5%=現行30%、法人事業税12%=現行7・2%)に戻すだけでも四兆円の財源が生まれます。
財界主導の試算は、大企業減税と軍事費にメスを入れることなく、ひたすら消費税増税に導こうとするもの。国民にとっては、社会保障の給付費は削られ、大増税が襲いかかる最悪のシナリオです。
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