軍需商社「山田洋行」の接待が、日本の過去の防衛庁長官だけでなく、アメリカ軍需産業がらみでもあることが見えてきた。
毎年5兆円のこの税金の使い道にどのような利権が隠されているのか。
それは日本の従米的軍事大国化における防衛産業の役割の問題でもある。
ぜひ明らかにしてほしい。
政軍財癒着 徹底解明を 志位委員長が会見(しんぶん赤旗、11月16日)
日本共産党の志位和夫委員長は十五日、国会内で記者会見し、同日の参院外交防衛委員会での守屋武昌前防衛事務次官の証人喚問の感想を記者から問われ、明らかになった二つの重大な点を指摘しました。
一つは、軍需専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者の接待を、守屋氏とともに受けていた政治家の名前が具体的に明らかになったことです。
志位氏は、守屋氏が名前を挙げた二人の防衛庁長官経験者―額賀福志郎、久間章生の両氏について、あらたに「証人喚問が必要だ」と強調しました。
もう一つは、日本共産党の井上哲士参院議員の尋問で、守屋氏が出席した宴席に、宮崎氏、久間氏に加えて「日米安全保障戦略会議」を主催する団体の事務局長を務める秋山直紀氏が出席していたことが明らかになったことです。
志位氏は、この「戦略会議」とは、日米の軍需大企業と日米の防衛族・軍事族の政治家が“大集合”する催しだと指摘。「証人喚問で日本国内での政・軍・財の癒着の構造が浮き彫りになっただけではなく、秋山氏の介在によってアメリカの軍需大企業の関与も問題になってきた」と強調しました。
志位氏は、「秋山氏の証人喚問も必要だ」とのべるとともに、「年間五兆円もの軍事費がどのようにつかわれていたのか、そこにはどういう利権構造があったのか、膿(うみ)を出し尽くす必要がある」と表明しました。
また志位氏は、防衛庁長官経験者の名前が二人も出てきており、首相と政府の責任が厳しく問われていると指摘。「福田首相は、首相としてのリーダーシップを発揮して、みずから徹底的に真相を究明して国会に報告するべきだ。それが首相の責任だ」と強調しました。
さらに、日本共産党としても審議を通じて徹底的な真相究明を引き続きすすめる決意を示すとともに、新テロ特措法案をめぐる今後の審議について「(防衛省・自衛隊という)利権と疑惑まみれの組織・部隊をそのままにしておいて、(政府・与党に)国際貢献を語る資格はない。この問題の究明が最優先だ」と指摘しました。
「日米パイプ役も同席」守屋氏証言 久間・額賀氏の喚問を 浮かんだ政軍財癒着 海外派兵体制づくりと一体(しんぶん赤旗、11月17日)
守屋武昌前防衛事務次官の二度目の証人喚問が十五日に行われましたが、そこで浮き彫りになったのは、軍事利権にむらがる政軍財の癒着の構図でした。政府は「何ら問題ない」(町村信孝官房長官)などと火消しに躍起ですが、この問題の徹底究明こそ最優先課題です。
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守屋氏は、軍需専門商社「山田洋行」の元専務・宮崎元伸容疑者(業務上横領容疑で逮捕)から、三百回に及ぶゴルフなどの接待を受けていました。その見返りに、防衛省・自衛隊の次期輸送機(CX)エンジン調達などをめぐって、便宜供与をはかっていた疑惑がとりざたされていました。
その守屋氏が証人喚問で明らかにしたのは、宮崎氏も出席した料亭での宴席に、久間章生元防衛相や額賀福志郎元防衛庁長官が同席していたことでした。宮崎氏も両氏の同席があったと証言しています。
久間氏との宴席には、日米の政界・軍需産業の仲介役となってきた秋山直紀氏(日米平和・文化交流協会常勤理事)が同席していたことも認めました。同協会も主催となって毎年開いている「日米安全保障戦略会議」は、日米の軍需産業や、自民・民主両党の国防族議員が一堂に集まり、日本政府に軍拡を求める場となっています。
ロ事件なみの疑惑
ことは、政府・与党が、国民には負担増を強いる一方で、「聖域」とし続けた年間約五兆円もの軍事費に日米の軍需産業と官僚、政治家がむらがり、行政をゆがめていたという疑惑です。国民の怒りの視線は、まさにこの点に注がれています。
だからこそ、マスメディアも「政治家は納得いく説明を」(「産経」)、「久間、額賀氏の喚問を」(「東京」)など、一斉に社説で真相究明を求めました。証人喚問では、自民党議員でさえ「(防衛省調達は)巨大利権であり、何か不透明な政官業の癒着のような構造的な問題がある」と指摘せざるをえませんでした。
米国にまで広がる疑惑の構図は、かつてのロッキード事件を思い起こさせるものです。
久間、額賀両氏らは「記憶にない」などと関与を否定していますが、これだけの疑惑がかけられている以上、自ら証人喚問に応じて真相を明らかにすべきです。また福田首相は、現職閣僚の疑惑を問われているのですから、自らの責任として徹底解明に乗り出す必要があります。
米国も非常に感謝
この問題で、見逃せないのは、一連の疑惑のなかで浮上した「日米安全保障戦略会議」が、新テロ特措法案に象徴される自衛隊の海外派兵体制づくりを要求してきたことです。
守屋氏と額賀氏との宴席に出席したジム・アワー元国防総省日本部長は、〇六年八月に東京で開かれた同戦略会議に出席し、インド洋やイラクへの自衛隊派兵を「米国も非常に感謝するところだ」と表明。一方で、英国やオーストラリアが「血を流すこともいとわない」ことを挙げ、海外での武力行使を可能とする集団的自衛権行使に向けた「政治的決断」まで求めました。
守屋氏の疑惑でとりざたされている次期輸送機も、海外派兵が目的の装備です。
浮かび上がるのは、国民の税金を食い物にした防衛利権疑惑と海外派兵体制づくりが、政軍財による癒着の中で進められているという構図です。
政府・与党は、疑惑にふたをしたまま、海上自衛隊を再びインド洋に派兵する新テロ特措法案の成立を急ぐ構えをみせています。しかし、真相解明に背を向けたまま、新テロ特措法案の審議を優先させるなどは許されません。(田中一郎)
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