日本企業に対する調査だが、投資先のとしての中国離れということではなく、むしろ、これまでのインド進出の遅れを取り戻す意識が高まっているということだろう。
インドが中国抜き首位 有望な投資先、企業調査(西日本新聞、11月30日)
国際協力銀行が30日発表した2007年度の海外直接投資に関する企業調査によると、今後10年を見通した有望な販売・投資先として、インドが中国を抜き初めて首位になった。
インドを挙げた企業(複数回答)の比率は70%を占めた。2位は中国(67%)で、ロシア(37%)、ベトナム(28%)が続いた。
特に自動車関連企業の支持を集めた。経済成長を続け市場としての魅力が高まっている上、優秀な人材が豊富との評価も多かった。一方で、道路や電力といったインフラ整備の遅れが課題として指摘された。
中国は今後3年程度の中期的な有望先としてトップを維持しているが、回答企業の比率は4年連続で低下。不透明な法制度運用や人件費高騰もあって、インドやベトナムに日系企業の関心が分散してきた。
調査は今年7-8月に海外に生産拠点を持つ970社に実施し、600社が回答した。
インドが初のトップ=長期的に有望な進出先-国際協力銀の07年度製造業調査(時事通信、11月30日)
国際協力銀行は30日、海外に進出した日本の製造業を対象とする「2007年度海外直接投資アンケート調査」の結果を発表した。それによると、今後10年程度の長期的に有望な進出先としてインドを挙げた企業が70%(複数回答)に上り、1995年にこの質問を調査項目に入れて以来、初めて中国を抜いてトップに躍り出た。
大消費市場へ注目…日系企業、M&Aテコにインド進出 みずほ総研リポート(FujiSankei Business i. 11月28日)
中国に比べて地理的に遠くインフラが未整備とされることなどから、日系企業の進出スピードが遅いと指摘されているインド市場。だが、みずほ総合研究所では、日本の10倍の規模という大消費市場の将来性への着目度が高まっているとして、「現地企業との提携やM&A(企業の合併・買収)戦略による日系企業のインド進出が増える兆しがある」とのリポートをまとめた。(藤沢志穂子)
みずほ総研がまとめたのは「インド市場に挑む日系企業」と題したリポート。日系企業のインドへの進出は、2006年1月時点の累積317社から07年2月までの段階で475社に急増。自動車など製造業が進出するデリー近郊のほか、ムンバイ、チェンナイ、バンガロールに進出企業の9割が集中する。対インド直接投資額も上昇中だ。
≪投資は欧米韓先行≫
ただインド投資は欧米や韓国が先行、日本の存在感はそう高くない。統計によると世界におけるアジア向け投資は、金額で中国が突出したトップであることに変化はないが、大型投資が一巡したこともあり、中国以外の国としてベトナム以上にインド向けが伸び、急速に台頭している。
日本企業の進出にとって最大のネックはインフラの未整備で、電力不足や通信事情、輸送路の問題が指摘される。デリー-ムンバイ間に、将来の大動脈となる貨物鉄道新線の計画があるが、電気かディーゼルかの採用方式も決まっていない。
加えて都市部を中心とした外資系企業の増加による、人件費と不動産賃料の高騰がある。インド日本商工会の5月の調査では、今年の賃金上昇率はローカルスタッフで16・1%だった。
リポートではインドの魅力を、拡大を続ける消費市場にあるとしている。インド政府や欧米の研究機関の予測では10年までに、自動車販売は04年実績の2倍となる200万台を突破。携帯電話契約者数は人口の約半分の5億人に達し、消費を支える中間所得層が、06年実績の4000万世帯から6500万世帯に拡大する、などと予測している。
≪アライアンス現実的≫
実際の進出にあたっては単独でなく、インド企業とのM&Aを含むアライアンスが現実的と指摘している。すでに日系企業の一部は、インドの大手企業と組むなどして進出を果たしている。今後は自動車産業に付随した部品製造業やサービス業、農業大国インドの特性を生かすアグリビジネス、フードビジネスが有望分野という。
インドでは中央政府と州政府の権限が分散されるなど、現地事情が複雑な面もある。リポートをまとめたみずほ総研の酒向浩二・主任研究員は「農地の工業用地への転用や大規模ショッピングセンターの建設で地元住民が反対し、地方自治体も支援する、といった日本的な事象も起きている。現地を知る意味でもアライアンスは重要で、後発のメリットを生かしたマーケティングや戦略が必要となる」と分析している。
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