「新行革プラン」について、財政収支悪化の見通しの甘さについて、県下多くの市町から批判がある。
「三位一体改革」による地方交付税削減の影響や、無駄なハコモノ建設についても。
同時に、市町からは公共事業の継続を求める声もある。
地域の疲弊感に対しては、効果と説得力の高い、別の経済政策が求められる。
県行革案、地域の事情賛否に反映 全市町アンケート<下>(神戸新聞、12月20日)
県の新行革プラン案「行財政構造改革推進方策案」には、普通建設事業費の大幅削減や県民局など地方組織の改編なども盛り込まれた。神戸新聞社が県内全四十一市町に実施したアンケートからは、こうした見直しの賛否の背景に、市町合併など「地域の事情」があることがにじんだ。県は各市町に意見を求めたが、推進方策案に意見が反映されたと感じている市町は二割程度にすぎず、「県は説明責任を果たしていない」という批判も寄せられた。(小森準平、畑野士朗)
■建設事業費の大幅削減 19市町が「反対」
県の建設事業費は、阪神・淡路大震災からの復旧・復興などで大きく膨らみ、その後も高止まり。二〇〇七年度予算で、国庫補助事業が全国平均の一・二七倍、県単独事業は一・八四倍もの高水準となっている。
新行革プラン案で県は数年かけて、全国平均レベルまで事業費を落とし、二千億円の効果額を見込んでいる。
この方針に、半数近い十九市町が「反対」と回答した。「反対」の市町の多くが被災地外で、都市部よりも但馬や西播地域などの郡部だった。社会基盤としてのハード整備に期待があると同時に、「地域経済への影響が大きい」という理由も多く見られた。
「賛成」は七市町。「背伸びした施設は必要ない」(伊丹市)との声が上がった。
十五市町は「どちらともいえない」。「削減は必要だが、具体的な見直しでは十分な協議を」(神戸市)「メリハリが必要」(淡路市)などの注文を付けている。
「やむを得ない」とするコメントも目立ち、評価に戸惑いがあることをうかがわせた。
■県民局など地方機関再編 撤退の地域には抵抗感
県は「現地解決型」を目指し、二〇〇一年度に現在の十県民局体制に再編。今回は、〇九年度から五県民局と神戸県民センターに再々編し、県税や土木などの各種事務所も再編・統合する方針を示している。
市町の受け止めは、県民局が“撤退”する地域で賛否が分かれる結果に。該当する二十四市町のうち、賛成が十五市町に対し、反対が八市町。一市は態度を保留した。
「地域の独立性が失われる」などとするのは篠山、丹波市。丹波県民局が廃止され、「阪神丹波県民局」となることに強い抵抗感を表した。宝塚市や猪名川町も「県との意思疎通に不安」などの反応だ。賛成の神戸市は、政令市ということもあり以前から必要性を疑問視する声が根強く、「二重行政の解消に期待する」とした。市町合併が進んだことを受け、撤退に理解を示す声も見られた。
■市町などへの周知 県の説明責任「不十分」の声
県が新行革プランの素案を発表したのは十一月上旬。福祉関連の事業で「周知期間」を設け、建設事業費の「段階的縮減」など、激変緩和策を検討課題として盛り込み、十一月下旬に「推進方策案」を公表した。市町や県会、関係団体から受けた意見を反映させたとしている。しかし、意見が「反映された」と感じる市町は九団体にとどまっている。「意見反映を感じない」とする十一市町は「全体像は変わっていない」と指摘。「『周知期間』という文言は見直しではない」(明石市)とする厳しい見方もあった。
また、「県財政を考えると、現実的には(市町の意見の)反映が難しいのでは」(太子町)や、「市町との協議や県民への説明を求めており、県は説明責任を十分果たしていない」(小野市)という声もあった。
21市町「震災が原因」 財政危機県の見通し甘さに批判(神戸新聞、12月20日)
七割近くの市町が「唐突だった」と受け止め、不信感をにじませている県財政の危機。厳しい行革が必要となるまで悪化した原因を、各市町はどうとらえているのか。
「最大の原因」を尋ねたところ、「震災の影響」が最も多く、二十一市町に上った。
「震災がなければ交付税削減にも耐えられたのでは」(尼崎市)「八千五百億円も残る震災関連の借金が重い」(南あわじ市)などとする意見が目立った。一方で「震災関連の予算に無駄はなかったのか」(多可町)など復興事業の中身に対する疑問もあった。
九市町が挙げた「三位一体改革による地方交付税削減」。「どこも同じだが三位一体改革でとどめをさされた感じ」(赤穂市)など、市町自身の財政の窮状と県とを重ねた声が大半だった。
「税収見通しの甘さなどによる県行革の遅れ」とする市町も八団体あった。「見通しが甘いとしかいいようがない」(明石市)「ハコモノに投資し過ぎたのでは」(相生市)など厳しい批判が寄せられた。
責任の所在については、十五市町が県当局(知事、幹部など)や県議会と回答。市町が県に厳しい見方をしていることが浮き彫りになった。
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