なるほど、新テロ特措法も09年1月で切れ、さらにイラク特措法も09年7月で切れる。
だからこそ、軍事的追随の対米アピールを競う自民にも、民主にも、切れない法律が、これまで以上に急がれる。
民主が提起したその種を、自民は大切にしようというわけである。
そして小沢流の国連重視は、スマートパワー委員会の方向にも重なってくる。
九条破壊の恒久法に道 与党 民主案 継続審議の思惑(しんぶん赤旗、1月15日)
新テロ特措法を再議決で成立させた与党が、民主党の「対案」を廃案にせず、「継続審議の対象にすべきではないか」(自民党の伊吹文明幹事長、十一日の記者会見)と次期通常国会に持ち越そうとしています。その思惑は――。
民主党の「対案」は十一日の参院本会議で、同党などの賛成多数で可決され、衆院に送付。十五日の臨時国会会期末で対応が決まります。参院で「対案」に反対した与党が継続審議を求めるのは「極めて異例」(国会関係者)な事態です。
与党がそこまで動くのは、民主党の「対案」が自衛隊の海外派兵をいつでも可能にする派兵恒久法の早期整備を柱に盛り込んでいるからです。民主党の「対案」を継続審議にすることで、民主党との恒久法づくりの協議に道を開く狙いがあります。
「証文としてとっておく」
再議決で成立させた政府の新テロ特措法は一年の時限立法。参院で野党が多数を占める政治状況のもとで、与党は一年後の期限切れで延長論議が再び“難航”することを懸念しているのです。〇九年七月末にはイラク特措法も期限切れとなります。
予想される衆院の解散・総選挙で再び与党勢力が再議決を行使できる三分の二以上の議席を確保することが難しいなかで、「民主党と恒久法の協議をする際の証文としてとっておく」(自民党関係者)というのです。
福田康夫首相は十一日、「何かあったときに、その時々で法律をつくると時間がかかり、機敏に対応できない。それを解消するには一般法があったらいい」と改めて表明。政府はすでに八日、派兵恒久法の本格検討に着手する方針を明らかにしています。その根本には、米国の先制攻撃戦略に対応して、いつでも機動的に海外派兵する体制を整備する狙いがあります。
集団的自衛権行使を可能に
重大なのは民主「対案」に盛り込まれた恒久法の内容です。
恒久法の整備に関連して、民主党の「対案」は国連憲章第七章の軍事行動を含む強制措置とともに、「憲法上の自衛権に関する基本原則」を盛り込むよう求めています。
すでに同党は、〇六年十二月の「政権政策の基本方針」で、国連決議の下での武力行使への参加とともに、「これまでの個別的・集団的といった概念上の議論の経緯に拘泥せず」として海外派兵での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使を一部容認する「基本原則」をすでにまとめています。
国連を“錦の御旗”として海外での武力行使を公然と認め、集団的自衛権に基づく派兵まで可能にするものです。
また「対案」は「アフガン復興支援」として陸上自衛隊のアフガン本土派兵、自衛隊による武器使用基準の緩和を盛り込み、さらに国連決議があればインド洋での海上阻止活動について参加を検討するとしました。
福田首相は民主党の小沢一郎代表との党首討論(九日)で、「対案」について「大変意欲的だと思う」「これから国会でおおいに議論させていただきたい」と述べていました。
派兵恒久法は、単なるインド洋やイラクへの派兵の延長ではなく、憲法九条を根底から破壊する「立法改憲」法です。その火種を残す、民主「対案」の継続審議は許されません。(中祖寅一)
派兵恒久化へ“火種” 民主案を継続 自公賛成 集団自衛権行使に道 衆院本会議 共産党は反対(しんぶん赤旗、1月16日)
臨時国会が十五日、百二十八日間の会期を終え、閉幕しました。この日、衆院本会議が開かれ、民主党が昨年十二月二十一日に提出した新テロ特措法の「対案」について継続審議にすることを自民、公明、民主、国民新の各党の賛成多数で議決しました。日本共産党と社民党は反対しました。与党は、参院では同法案に反対しており、安全保障という国政の基本問題で衆院と参院で異なった対応をするという、異常な事態となりました。
-------------------------------------------------------------------------------- 同法案は、海上自衛隊をインド洋に再派兵する政府提出の新テロ特措法に対する「対案」として、民主党が参院で提出したものです。「国際的なテロリズムの防止及び根絶」を掲げ、それに対応するという口実で、自衛隊の常時、迅速な海外派兵を可能にする恒久法=本格的海外派兵法の早期整備を求めています。 その恒久法の中身として「憲法の下での自衛権の発動に関する基本原則」を盛り込んでいます。自衛権について民主党は、個別的自衛権と集団的自衛権の区別なく容認する方向を打ち出しており、この「基本原則」が「テロ根絶」を口実にした集団的自衛権の行使=海外での武力行使に道を開く危険があります。 今回、与党が異例の対応をしたのは、民主党とともに恒久法を推進する立場から、制定につなげる協議のきっかけ、“導火線”としたい思惑があるからです。 同法案は、「復興支援活動」を口実にしたアフガニスタン本土への自衛隊派兵が前提。国連の決議などがあれば海上阻止活動そのものへの参加も検討するとしています。さらに、武器使用基準も、自衛官が自分などを守るためだけに限定していた従来の海外派兵法より緩和し、「活動の実施に対する抵抗を抑止するため」にも可能としています。 衆院本会議で新テロ特措法を再議決する動議に対する賛成討論(十一日)で、自民党の小坂憲次議員は「民主党の対案には今後の重要な検討課題として議論すべき内容も含まれている。民主党をはじめ、野党と緊密に協議し、自衛隊の海外派遣にかかわる恒久法の制定につなげていくべきだ」と主張。福田康夫首相も「これから国会でおおいに議論させていただきたい」(九日の党首討論)と述べていました。
新テロ法民主対案 継続審議 派兵常態化を狙う(しんぶん赤旗、1月16日)
解説
「(アフガン)本土に陸上部隊を派遣し、武器使用基準を見直すというのだから、もっと審議・検討する価値がある」
自民党の新テロ特措法案作成のプロジェクトチームの中心メンバーで防衛庁長官経験者は、民主党の「対案」を継続審議にした「理由」についてこう述べます。
民主党の「対案」は、「アフガン復興支援」を名目に陸上自衛隊のアフガン本土派兵を盛り込み、自衛隊員による武器使用基準を大きく緩和しました。また国連決議がある場合には、米国のアフガン報復戦争と一体である海上阻止活動への参加を検討するとしました。
民主党は与党案に“反対”する姿勢を強調してきましたが、その「対案」は、インド洋での給油継続に限定した与党案よりも大きく踏み込んだ内容です。高村正彦外相も「自民党がそういうものを先に出した場合、民主党が本当に賛成してくれたかわからないものを民主党が出してくれたことは有意義」(十一日)と述べるほどです。
法整備義務付け
参院では民主「対案」に反対した与党が、衆院で「継続審議」とした最大の狙いは、自衛隊海外派兵の恒久法の実現に向けて“火種”を残すところにあります。
民主「対案」は、「国際的なテロリズムの防止及び根絶」を口実に「我が国の安全保障の原則に関する基本的な法制が速やかに行われるもの」としています。「アフガン復興支援」とは関係なく、自衛隊の海外派兵を恒久化する法制=本格的海外派兵法制の早期整備を義務付けるものです。
恒久法整備を「柱」に「対案」取りまとめを指示したのは小沢一郎代表です。そしてそれは小沢代表と福田康夫首相との「大連立」協議の最大のテーマの一つでした。
政府は年明け八日、新テロ特措法案強行の構えを固めつつ、恒久法の本格検討に着手する方針を明らかにしました。
その根本には、アメリカの先制攻撃戦略に対応して、いつでも機動的に海外派兵する体制を整備する狙いがあります。〇五年十月の在日米軍再編に関する中間報告は「国際的な安全保障環境改善」を口実に、米国と日本が海外の共同作戦態勢で「実効的な態勢を確立するための必要な措置をとる」ことを合意しました。
民主「対案」に示される恒久法の内容は、これにこたえる中身です。
2つの基本原則
「対案」は二つの「基本原則」を盛り込むとしています。一つは憲法の下での自衛権の発動にかかわるもの。もう一つが国連憲章にかかわるものです。これらの「基本原則」についての考え方を、民主党はすでに〇六年十二月の「政権政策の基本方針」でまとめています。そこでは国連決議があれば経済制裁や軍事制裁を定めた憲章四一条、四二条にもとづく行動に参加するとしています。さらに「個別的・集団的といったこれまでの概念上の議論の経緯に拘泥せず」自衛権を行使するとして、集団的自衛権の行使を一部容認しました。
憲法九条のもとで、国連のお墨付きがあれば海外での武力行使を可能とし、それがなくても米国と一体の武力行使ができるということです。
政府は新テロ特措法の一年後の期限切れをにらんでそのときまでに恒久法を整備しておこうと急いでいます。海外派兵体制を常態化する恒久法は、憲法九条と根本的に相いれません。(中祖寅一)
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