『「慰安婦」と出会った女子大生たち』(新日本出版社、2006年)の韓国語訳が、2008年1月に出版されているようです。
この本の出版を、私は今日(3月4日)はじめて、韓国在住の友人から知らされました。
私たちの本の翻訳に、何本かの論文が追加される形で出されているようです。
このような翻訳がなされることは、たいへんにうれしいことです。
ただし、本書の出版にいたる経過には、若干の問題がありました。
韓国語訳出版の話は、2006年12月にはじまりましたが、その後、2007年5月を最後に、私と出版社との連絡はとれなくなっていたのです。
なぜ連絡がとれなくなったのか、それにもかかわらず、なぜこの本は出版されたのか、そうした経緯は、私にも良くわかりません。
とはいえ、韓国語訳はすでに流通しています。
そして、私はその本の内容を、現時点で確かめることができません。
そこで、余計な誤解を避けるために、韓国語訳の出版に込めていた私自身の思いをここに紹介しておきたいと思います。
以下の「韓国語版読者のみなさんへ」は、2007年3月に書き、日本語と韓国語訳の両方をただちに韓国の出版社に届けたものです。
この文章が、そのままの形で翻訳書にも掲載されていることを、切に願います。
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韓国語版読者のみなさんへ
この本は日本の神戸女学院大学の学生たちによる「慰安婦」問題についての学びの記録であり,また日本の若い世代に「慰安婦」問題を知らせ,問題解決の緊急性を訴える「慰安婦」問題の入門書です。日本では2006年2月に出版されました。
ご承知のように日本の政府は,学校教育の中で日本による朝鮮半島や中国,東南アジアや太平洋諸島への侵略の歴史を正しく教えることを拒んでいます。そのような社会状況があるだけに,中学生や高校生にも読むことのできる,こうした入門書の出版は日本では重要な役割を果たすものとなっています。
さいわいなことに,同じ年の秋には「ナヌムの家」でこの本の販売をしていただけることになり,それがひとつのきっかけとなって韓国語訳の話がすすみ,このようにみなさんにも読んでいただけることになりました。
日本の国民は,決してかつての侵略戦争を肯定するような人間ばかりではありません。ぜひ,この本を通じて,日本の若い市民の当たり前のものの考え方を知っていただければ幸いです。
さて,安倍首相は,侵略戦争への反省を前提とする戦争放棄の条項(第9条)をふくむ「日本国憲法」の改訂を,任期中に行うことを公言しています。また自民党の政治に強い影響力をもつ最大の財界団体・日本経団連もこれを強く支持しています。その背後には,米軍と自衛隊の一体化を求めるアメリカ政府の要請がありました。これはなかなか大がかりに準備をされた策動です。
しかし,歴史の真実をゆがめ,国連憲章にもとづく平和秩序の実現を求める世界の流れに逆らおうとするこのような動きに未来はありません。日本国内には憲法を守り,改憲を許さないとする政治運動や市民運動の大きな高揚が見られます。
著名な文化人等のよびかけによる「9条の会」は全国に広がり,すでに6000を超える組織を地域や職場につくっています。それは今も増え続けており,私たちの神戸女学院大学でも「9条の会」が活動しています。
また日本には,侵略戦争に反対し,朝鮮半島をふくむ植民地の解放を命がけで訴えた英雄的な闘いの歴史があり,戦後も日米安保条約の強化に数十万の人々が国会をとりまいて反対した,反戦・平和をもとめる運動の伝統があります。
憲法を守る今日の取り組みは,この伝統を受け継ぎ,新しく発展させるものといっていいでしょう。この本も,大きくはその伝統の上に位置づくものです。
翻訳は,韓国のみなさんにお任せしました。最初に韓国語訳のお誘いをくださったのは,韓國民俗劇研究所の朴海順先生です。監修は同研究所所長の沈雨晟先生に,出版については「図書出版東文選」(辛成大社長)のみなさんにお願いすることになりました。
また「韓国語版読者のみなさんへ」の翻訳は,私たちの大学で韓国語を教えてくださっている鄭英子先生にお願いしました。みなさんには心より感謝申し上げます。
日本語版では,冒頭30ページほどがハルモニの絵画をつかった「絵本」となっていますが,この韓国語版では,すばらしい写真が掲載されるとうかがっており,私たちも大変楽しみにしています。
この本が,歴史の真実を正しく見つめ,今日の北東アジアにしっかりとした平和秩序の建設を願う,日韓の特に若い世代の交流と連帯の発展に少しでも役立つならば,これ以上の喜びはありません。たくさんの方に読んでいただけることを,心より期待しています。
2007年3月5日
神戸女学院大学・石川康宏
韓国出張から戻って、久しぶりに先生のホームページを拝見しました。
さて、韓国語版が出たとのことですが、韓国最大の書店「教保文庫」のホームページをのぞいてみると、確かに出ているようです。
http://www.kyobobook.co.kr/product/detailViewKor.laf?ejkGb=KOR&mallGb=KOR&barcode=9788980386246&orderClick=LAH
出版社と訳者の方は、先生が文章中に記されている会社・方の名前が記されてあります。
目次を拝見してみると、「韓国語版読者のみなさんへ」という項目があり、先生の文章も含まれているようですよ。
最近は少なくなったのですが、韓国の出版社も興亡が激しく、突然連絡が取れなくなったり、つぶれたり、ということはありました。でも、最近はほとんどないんですがね・・・。
ちなみに、私は韓国に1年住んでおりましたので、ハングルは多少なりとも理解できます。
投稿情報: 福田 | 2008/03/07 13:13
福田さん、コメントありがとうございます。私もネットで目次はながめてみました。
先方とのあいだに入って連絡してくださった方があり、いまは事情が少しずつわかりかけているところです。
ご心配いただき、ありがとうございました。
投稿情報: walumono | 2008/03/07 16:42