以下は 日本民主青年同盟『民主青年新聞』2008年2月18日号に掲載されたものです。
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Q&Aから考える科学的社会主義
第6回 社会って資本主義で終わりじゃないの?
「なぜ科学的社会主義を学ぶの?」――連載では、科学的社会主義の学習や日常のくらしでぶつかるような疑問を出発点に、そもそもから学びます。最終回は、資本主義社会を乗り越えた「未来社会」について考えます。
「資本主義は永遠だ」という声を耳にします。でも過去の社会はすべて歴史の一つの段階でした。資本主義だけが永遠だという理由はどこにもありません。「社会主義には自由がない」ともいわれます。ではその社会主義とは一体どんな社会のことでしょう。最終回の今回は資本主義の先に来る「未来社会」を考えます。
資本主義が生み出す問題の解決
マルクスやエンゲルスは、資本主義の次の社会のことを社会主義とか、共産主義という言葉で呼びました。これはどちらも同じ社会を指した言葉です。
社会主義は、人がそう願いさえすればどんな社会でも出来るという観念論(空想的)が生み出したものではありません。これまでの人間の歴史に経済の変化を土台とする発展法則があったように、社会主義への変化も、資本主義自身の仕組みによって大筋の内容が決められるものです。
経済の型は「働く人と生産手段との関係」を基準に決まりました。そして資本主義の経済は、第一に資本家が生産手段をもっており、働く人(労働者)はそれをもっていない、第二に労働者は資本家に雇われることで生産手段に結びつく、という特徴をもっています。
そこから、できるだけ労働者の賃金を小さくして自分たちのもうけを大きくしようとする利益第一主義が生まれ、資本家同士の競争がこれに輪をかけていきます。
ワーキングプアなどの貧困や労働者いじめ、地球環境破壊といった深刻な問題も生まれます。人々はこうした現にある具体的な問題の解決を求めて、資本主義経済の弱点を乗り越えようとしていきます。
では経済の型をどう変えれば、問題は解決に向かうでしょう。生産手段を1人のものにすれば資本家同士の競争はなくなります。しかし、その1人による労働者への経済的な支配はなくなりません。
また何人かの資本家が何人かの労働者に生産手段を引き渡しても、今度はその労働者が新しい資本家になるだけです。結局、解決は、生産手段を働く人たち全員のものとする以外にありません。
こうした経済の変革を「生産手段の社会化」といい、これを十分になし遂げた社会を社会主義社会と呼んでいます。生活手段は、もちろん個人の所有です。また「社会化」の具体的な方法は、歴史的条件によって様々です。ただし、それがどんな形であっても「働く人」が生産手段の所有や運用の本当の主人公となることが必要です。
社会主義が切り拓く人類社会の豊かさ
こうしてつくられた社会主義の経済は、社会と人間の発達に次のような新しい特徴を生み出します。
1つには、すべての人々が自由な時間をつうじて、各人の能力を自由に発達させることができるようになります。ここで決定的な役割を果たすのは労働時間の抜本的な短縮です。「時間さえあれば、あれもこれもやってみたい」。みなさんもそういう思いをもっていませんか。それがどんどん実行に移せるようになるわけです。
2つには、経済が個人のもうけのためでなく、社会の全構成員の安心・安全なくらしのための活動に変わります。それによって人々の労働条件を改善し、社会的な格差の拡大を規制したり、地球環境破壊を抑える仕組みをつくるなどのことが、社会全体の大きな目標となっていきます。
3つには、生産力の飛躍的な発展です。自由時間をつうじた個人の豊かな発達は、生産に必要な科学や技術を全社会的な規模で発展させます。また経済活動の目的の転換は、これに参加する各人の意欲を大いに高めるものとなるでしょう。これによる生産力の発展は、労働時間短縮のさらなる可能性を拡大します。
4つには、自由と民主主義の発展です。資本家による「搾取の自由」は廃止され、社会構成員の豊かに生きる自由が拡がります。また各人の豊かな発達は、自由や民主主義に対する個人の欲求を高めます。宗教や思想、社会主義に反対する政治活動も自由です。
こうした社会主義の多面的な発展は、次第に国家権力を不要なものとしていきます。社会のルールを守ることは、社会構成員自身の自発性にもとづくものにかわるのです。さらに歴史を大きな視野で見れば、こうした社会の実現は、人間らしい理性が良く発揮される「人間の本当の歴史」の入口ともなっていくものです。
社会主義をめざす取り組みの現状
地球上には、まだ社会主義社会は生まれていません。社会主義をめざす本格的な取り組みは、1917年のロシア革命に始まります。革命をなし遂げたレーニンは、市場を活用した社会主義経済づくりの道にたどりつきます。
しかし、政権を継いだスターリンは民主主義や市場を投げ捨て、1930年代にソ連は国内では専制的な支配の社会、対外的には自国の意志を力で押しつける覇権主義の社会に変質します。1991年に崩壊したソ連は、社会主義とはまるで無縁の社会でした。東欧各国も同じです。
ソ連崩壊をきっかけに「社会主義は終わった」「共産党は古い」という宣伝が行われました。しかし10数年がたったいま、社会主義をめざす中国やベトナムが急速な経済成長により世界の注目を集めています。この両国に共通するのは、市場を活用した社会主義経済づくりを目指していることです。
また中南米には、社会主義をめざすキューバと連帯し、新たに社会主義への道を歩もうとするニカラグアやボリビアなどがあらわれています。南米最大の経済大国ブラジルの政権党である労働党も、最近の党大会で社会主義を第一の議題としています。豊かさや民主主義、環境や資源の問題でも、課題はたくさんありますが、社会主義をめざす動きはこうして各地で成長しています。
日本では資本主義の枠内での民主的改革の先に、「生産手段の社会化」を軸とする社会主義的変革が課題となるでしょう。高い生産力、自由と民主主義の充実、経済に対する民主的なコントロールの様々な経験、これらを十分へた後に、より豊かな暮らしを求める欲求が、社会主義の実現をめざすものへと発展します。
そこには多くの挑戦と開拓が必要でしょう。しかし、発達した資本主義国での社会主義への前進が、21世紀の新しい世界史的課題となっていることはまちがいありません。
これで6回の連載は終わりです。いかがでしたか? 科学的社会主義を学ぶと日本と世界が見えてきます。そして生きることへの自信がついてきます。大いに学びましょう。
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