1)ガイダンス的な授業とする。「現代社会と経済学」「経済学」「比較経済論」の中で「比較経済論」がもっとも専門的で,むずかしい。前期はアメリカ経済,後期は中国経済を検討する。
2)経済を比較することの1つの意味は,日本が世界の「標準」であるという誤解の皮をはぎとること。国連加盟の191ケ国のうち,日本の経済力は第2位となる。日本は地球上のホンの一握りの経済大国,他方で65億の世界人口のうち8億人以上が飢餓人口である。
3)先進国内部で比較をしても,たとえば日本の労働時間の長さは「異常」なもの。それが家庭のあり方にも「男性不在」あるいは「家事の女性偏重」という特徴を生む。「サービス残業」を含めて日本の年間労働時間は2200~2300。フランス・ドイツにくらべて年間700~800時間の超過であり,労働日数を年250日とすれば1日3時間の格差となる。その長すぎる労働時間が家庭生活への圧迫となる。
4)現状を超えて未来を見るとき,日本の政治が模範としている国の形はアメリカ型。「構造改革」の重要な特徴はアメリカ政治経済構造づくり。すでに,格差社会,自己責任の強調(勝ち組・負け組),競争礼賛などの共通する特徴があり,この仕組みを維持するための2大政党制という共通点づくりや,さらに「新憲法草案」など「国連」に従わず先制攻撃を行うとの軍事政策でも共通点がつくられようとしている。
5)日本のアメリカへのこうした接近は最近の一過的な話ではない。歴史を簡単に振り返るなら,41年12月8日の「真珠湾攻撃」から日米は戦争状態に入った。45年8月15日に日本は敗戦を迎える。45年8月末には連合国を代表して米軍が日本を軍事占領し,それが52年4月28日まで継続する。その7年の間に政治や経済の仕組みがアメリカに都合良くつくりかえられていく。
6)あわせて52年4月28日は,日米安保条約発効の日でもある。条約の主たる内容は基地提供の義務。現在の日本に130もの米軍基地があり,今も沖縄の新基地建設の強制に政府がまるで抵抗しないことの背後には,この条約の内容がある。60年には新安保条約が発効する。これが現在の安保条約。内容としては,基地提供の義務に,日米共同作戦の義務,軍事力増強の義務,経済協力の義務が加えられた。
7)「経済協力」の実態があらわになった最近の例に郵政民営化がある。05年9月12日投票で「郵政民営化選挙」が行われたが,9月28日にはアメリカ下院歳入委員会でカトラー通商代表部補から,日本政府の協力を得て日本の郵政民営化をすすめているとの証言が出る。結局,週1回の日米政府相談の積み重ねの上に法案がつくられ,10月にはこの民営化法案が国会で成立する。12月にはアメリカの改革要望書がこれを長年に渡るアメリカの要望の実現と評価した。
8)すでにかなりの地域で郵便局廃止・統合案が出ているが,その業務の代行は郵便配達については宅急便業界が,預金については銀行が,簡易保険については保険会社が行っていくことになる。宅急便のフェデラルエクスプレス,銀行のチェースマンハッタン,メリルリンチ,保険のアリコ,アフレックスなど,その実態は郵便局(郵政公社)利用者の便益を無視した日米民間企業への市場の割譲である。なお,もともと郵政公社は独立採算制であり「税金の無駄遣い」はそこにはない。また「民営化すれば法人税が入る」というのも,すでにある国庫納付金が逆に減少するのが事実である。
9)このような活動を世界各地で行うアメリカの政治や経済を,特に経済の仕組みに焦点をあてて解説していく。テキストを読み,最近のニュースを補足していく。テキストは大きくむずかしい。評点は原則定期試験のみによる。
10)最後に受講希望者から「出席票」を回収する。
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