1)今日からテキストに入る。奥付で編者の略歴を確認。「序・現代アメリカ経済とはなにか」を読んでいく。テキスト全体の見取り図となる章だが,テキスト第1部では主に個別企業の活動とその周辺環境が,第2部では連邦政府の経済政策が,第3部ではアメリカン・グローバリゼーションの推進を狙うアメリカの対外経済政策が語られていく。
2)まず第1部。91年3月01年2月までの120ケ月に及ぶ「ニューエコノミー」と呼ばれる景気拡大の時期の特徴について。①景気を主導したのは家計消費支出と設備投資であり,とりわけ設備投資はIT産業が機軸となった。②家計消費の拡大をもたらしたのは株価増大による家計資産価値の上昇。たとえば企業年金の運用による価値上昇が,現瞬間の可処分所得を「拡大」し,貯蓄率の低下をともなく消費の拡大を生んだ。③企業経営に対する機関投資家の発言力の増大。④景気拡大の中での正規雇用比率の縮小,不安定雇用の拡大。そこにはITによる労働様式の変化とともに人件費削減への企業の衝動がある。⑤その結果賃上げは抑制されることとなる。
3)第2部に関連して。①金融政策については,総じて間接金融から直接金融への転換が進む。証券資本主義,株主資本主義といわれる方向への資本主義の形態変化である。②財政政策については,「大きな政府」から「小さな政府」への転換がいわれているにもかかわらず,現実には「大きな政府」は継続し,とりわけ軍事支出を急拡大させたブッシュ政権のもとで財政赤字は歴史上最大。③独占政策については,少数巨大企業による市場支配をアンフェアだとする「反独占の思想」があるが,最近では競争のグローバリゼーション化のもとで巨大企業同士の合併が促進される傾向にある。④所得分配政策については,戦後所得分配の公平化が進んだが,特に80年代後半以降は格差の拡大がすすむ。「スーパーリッチ」といわれる極一部の富裕層の形成による。
4)第3部に関連して。①アメリカの企業に都合の良い世界経済のルールづくりが意図され,それがアメリカン・グローバリゼーションと呼ばれている。しかし,ラテン・アメリカの急速な「新自由主義」離れ,EUのアメリカ批判,東アジアのアメリカ離れなど,現実の世界経済ルールは,アメリカの思惑とこれに抵抗する国たちとの力のぶつかりあいによって左右される。②アメリカ企業の中でとりわけ国際競争力が強く,海外活動が活発なのは,銀行・保険・証券・会計・運輸・ホテルなどの金融・サービス部門であり,この領域での世界ルールづくりがとりわけ今日的な焦点となっている。次回は第1章にすすむ。
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