1)テキスト28~39ページを読む。まずは第3節「アメリカによる世界戦略の新展開」の後半部分から。グローバリゼーション戦略の軍事部分である。湾岸戦争後,アメリカはただちに「国連を活用するが,意にそぐわない議決には従わない」ことを明らかにする。その代表的な実践例がユーゴ空爆とイラク戦争。ユーゴ空爆直後の99年4月,アメリカは国連合意なしの軍事行動をNATO軍が了承する「新戦略概念」を採択させ,日本との間には97年の新ガイドライン,99年の周辺事態法とやはり同種の確認をすすめていく。その後,イラク戦争への対応をめぐりNATOには「亀裂」が入るが,日本はアメリカへの軍事協力を直線的に深めている。
2)第4節「財界の『国際戦略』」に進む。以上のアメリカによる経済・軍事グローバリゼーション戦略に対応して,日本の政財界も対外戦略を転換する。主な内容は6つにまとめられるが,第一の特徴として,この対米追随の背後に日本大企業自身の多国籍化を指摘することができる。アメリカによる「構造調整」「構造改革」「自由化」の各国への強制は,それにつづいて当該国に参入しようとする日本多国籍企業の利益を切り開くものともなる。アメリカ多国籍企業に追随していく「小判鮫」型の利益拡大戦略である。
3)第二に「日本市場のグローバル化」は,アメリカへの市場割譲の側面とAPECを通じた東アジア各国に対する「市場開放」圧力としての側面をもつ。アメリカへの市場割譲は,橋本内閣がはじめた金融ビッグバンにより急速にすすみ,銀行・保険業者が求めた昨年の郵政民営化へと結びつく。第三に日本財界の対東アジア経済戦略は独自の経済圏づくりをめざすものとはなっていない。あくまでWTOを柱としたアメリカの世界市場自由化の路線,その一環としての対東アジア戦略を補完するもの。なおWTOの行き詰まり以後,アメリカはFTAによる二国間協定を推進するが,日本がその分野の遅れに気づくのは2000年前後のこと。以後,主に東アジア各国とのFTA協議を開始する。
4)第四に軍事面では,アメリカの「国連を活用するが従わない」との戦略に対応して,新ガイドライン・周辺事態法の具体化をすすめ,他方で国連常任理事国入りを果たそうとする。国連の許可を必要としないアメリカとの共同軍事行動については,テロ特措法・イラク特措法と具体化され,さらにこれらの行動への一切の制約をなくす憲法「改正」が用意されている。常任理事国入りについては,最終的には日中関係の悪化と中国等東アジア地域への配慮から,事実上,アメリカが日本の常任理事国入りを切り捨てた。アメリカにとっての日本の位置づけは,ますます支配・活動の対象としての度合いを深めている。次回は第5節から。
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