1)靖国ツアーのための資料を配布。またガイドをお願いした方から届いた各種パンフレットも回覧する。まずは,昨年靖国で手にいれてきた1939年海軍省作成の戦意高揚フィルム『支那事変海軍作戦記録』を見て,つづいて『証言・侵略戦争--人間から鬼へ,そして人間へ』を見る。海軍省のフィルムには「正義のために闘う規律正しい日本軍」が描かれている。そこには殺された中国人等の姿はなく,37年の上海にすでにあった「慰安所」の映像ももちろんない。戦争への「信頼」と戦場への「憧れ」をつくるフィルムといって良い。他方,実際に「自分が戦場で何をしたか」を語る後者には,捕虜の殺害,首切り,拷問,一般市民の虐殺と,これとはまったく異なる「戦争」像が描かれる。合計2時間弱。
2)短く感想を話し合う。「自分も前者だけを見ていたら,正しい戦争と思ったかも知れない」。そこにこそ海軍省のねらいがあり,今日の靖国「遊就館」のねらいもある。アジア人虐殺の歴史は,わずか61年前までこと。80代の日本人ならこれに直接加担した過去があったも不思議でなく,他方,被害の側からすれば,60代であっても多くの悲惨な記憶を残している。実際,日本に強い不信感をいだきつづける人は少なくない。「戦争は昔のこと」ではなく「現代につながっていること」である。その現実を直視することが若い世代にも大切である。
3)テキストは第3章「日本国帝国主義民衆生活の変化」を読んでいく。戦後もつづいた「良妻賢母」教育,「近代家族」の形成に対応した皇室のファミリー・イメージの普及,崇拝の対象でありと同時に靖国など国家神道の祭祀の最高執行者でもあった天皇の役割,東京モスリンのストライキをはじめとした「女工」たちの闘い,「女工」たちの内部にさえあった内外の「植民地」出身者に対する差別意識と待遇,「産めよ,ふやせよ」の国家的強制などを学んでいく。
4)マーガレット・サンガーの来日(1922年)をきっかけとした「産児制限」の運動だが,避妊については具体的にどのような方法がとられたのか。また今回も明治政権が「なぜ天皇をかつぎだしたのか」が大きな疑問となる。幕末期の天皇の実際の地位や,社会的影響力はどのようであったか,また明治政権が現人神の「神話」の活用など宗教的な先祖返りをしていくことの必要性はどこにあったのか。逆にその歴史が侵略戦争期日本社会の内実にどのような影響を及ぼしたのか。これらが検討課題とてし残る。次回はこの天皇問題と第4章の検討を行ないたい。
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