1)テキスト第5節「『ゼネコン国家化』」を読んでいく。ここまではアメリカのグローバリゼーション戦略に方向づけられた,規制緩和・市場開放・海外進出・軍事大国化の側面だったが,今回はゼネコン関連資本による国家・地方財政の私物化の側面について。
2)日本の公共事業費はまず額が異常に大きい。国・地方合計で日本の事業費が最大となった93年には,1ケ国でG7の残り6ケ国合計より大きく,アメリカの2.7倍に達した。04年に財政制度等審議会に提出された政府資料によれば,GDPにしめる公共事業費(土地代・道路公団など公企業をのぞく)比率は,イギリス0.3%,ドイツ1.0%,アメリカ1.0%,フランス1.3%に対して日本3.7%となっている。
3)それが,先進国中最悪の財政赤字の大きな要因となった。累積赤字額は06年度末で国536兆円,国・地方合計で775兆円の見込み。毎年の政府予算に借金返済を意味する国債費がふくまれているが,返済のためにさらに多額の借金をしているのが実情である。なお財政については,収入面で法人税減税を消費税増税で穴埋めしようとする累進課税原則の破壊,支出面で公共事業費(世界1位)・軍事費(世界2位)を確保しながら社会保障・教育を削るという収支両面の構造的な問題がある。社会保障予算削減の事例として「障害者自立支援法」を紹介。
4)具体的な事業には無駄が多いが,その事業の計画主体がそもそも財界自身であることが多い。98年3月の「新全国総合開発計画(5全総)」には和歌山と淡路島を結ぶ橋の建設計画が盛り込まれたが,それは96年の経団連「新しい全国総合開発計画に関する提言」にあったもので,さらに日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が94年の「社会資本整備の促進と内需拡大に関する提言」にふくめていたもの。要するに建設当事者(公共事業費を手にする企業)の立案を,国家が承認していくのが公共事業計画の立案過程となっている。他にも関西国際空港や東京湾横断道路など,JAPICの発案から実施された無駄と環境破壊の事業は多い。このような行政が継続することの背後には,ゼネコン関連資本等による企業・団体献金の威力がある。政治の買収による公金の私物化。
5)大型公共事業は景気刺激策として合理化されるが,90年代の「50兆円」支出にもかかわらず景気は好転しなかった。その背後には,60年代の高度成長期には少なくとも財界にとって必要なものをつくったが,今日は財界にとってさえ必要のないものをつくっている。かつての公共事業は雇用の効率が高かったが,機械化の進んだ今日では効率が遥かに低くなっているという事情のちがいがある。それだけ景気への波及効果は縮小し,「公金私物化」の度合いが深まっているということ。
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