1)ビデオ「アルバムでたどる その時代と生涯」を見る。松井やよりの生涯である。男性優位社会の中で,女性でありアジア人である自分の生き方を模索し,最終的には「女性国際戦犯法廷」に収斂する。「社会をかえたい」という熱意は若い頃から変わらない。時代と格闘し,時代を切り開くその生き方は,大いに学ぶところがある。それは現代の若い世代にも可能な道である。
2)テキストの前回までの範囲にかかわる報告は「神道について」(小谷さん),「日本の英語教育」(田中丸さん),「下山・三鷹・松川事件」(成瀬さん),「女性参政権」(辻中さん)。神道は元来教義をもたない「行為の宗教」だったが,これが「言葉の宗教」である仏教との「神仏習合」のなかで,「神道五部書」といった「言葉」をもつようになる。「神宮寺」は神仏習合の象徴のひとつだが,神が悩める存在であり,それが仏によって救われるというきわめて独特の「神」観が生まれる。明治の廃仏毀釈の前提である。日本での英語教育は,まず国防のために行なわれ,次に西欧文明を学ぶために行なわれ,さらに戦時には表向きの敵国語排除の影で諜報の手段として学ばれた。戦後は国際社会でのコミュニケーションの用具と位置づけられるが,アジアの言語への長いあいだの無関心は,明治以来の「脱亜入欧」に戦後の日米同盟が重なった結果といえるのだろう。
3)「下山・三鷹・松川事件」は,いずれも49年7・8月に集中して「国鉄」に起こされた不審事件。中国革命や朝鮮戦争直前というアジアの情勢下で,占領軍と日本政府による民主的運動に対する弾圧がつづく。3事件はいずれも結果的に国労と共産党に打撃を与えるものとなった。しかし,松川事件では逮捕・起訴者全員が後に無罪となる。三鷹・下山事件も真相は闇の中。戦後日本の「逆コース」を保障するための権力による謀略事件との見方は強い。今日の「親米日本」がどのような経過をへて仕立て上げられたを具体的に教える出来事である。世界の「女性参政権」は1893年のニュージーランドが最初のようだが,イギリスの1928年にはるかに先んじている。なぜそれが可能であったか,またアメリカ1920年やイギリスでの参政権獲得をめぐる実情をさらに掘り下げる課題を今後に残す。
4)テキスト第6章「ウーマンリブと社会運動」を読んでいく。第1節「東アジアの冷戦体制と女性」ではキーセン観光(買春ツアー),65年の日韓基本条約が話題となる。第2節「民主化への闘い」では韓国の軍事独裁政権とその民主化に向けた国民の闘い,日本の60年安保闘争,「挫折・無力」への焦燥からの一部の学生運動の「過激」化,光州事件と弾圧政府に対するアメリカの支持,日韓での反米軍基地闘争,両国政府によるアメリカへの貢ぎ物としての済州島と沖縄の共通性などが話題になる。戦後史もまた決して平坦なものではない。そこには時の権力と国民との闘いの起伏があり,今日もまたその対抗関係の起伏がある。それが現代という時代。さて,どのような生き方を選びとるか。
5)前回のゼミで紹介した『フーゾクの経済学』を読んだ「風俗に関する報告」(渡部さん)も行なわれる。あわせて「風俗」をレポートとしたテレビ番組の紹介も。買売春の隆盛には,抜け道の多い法律の問題,高い「報酬」にひかれる女性の存在に焦点があてられることが多いが,あわせてセックスを消耗品として大量に買い続ける男性の存在,買売春の側面から見た日本社会の国際比較も必要か。ここは今後の課題につなげることにする。
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