1)テキスト第6章「政府規制とイノベーション」を学ぶ。資本主義の社会には「金もうけの自由」があるが,特に企業規模が大きくなった段階でそれが野放しにされると,社会への否定的影響も強くなる。それを制御するものとして政府による経済への規制が生まれてくる。1873年からの「大不況」期に「トラスト」といわれる企業結合の進展があるが,これに際して,あまりに個別企業の市場支配力が強まると,独占価格の設定などにより消費者の不利益が拡大すると考え,それを抑制するものとして1890年にシャーマン反トラスト法と呼ばれる独占禁止法が生まれる。「独占」の問題点は,①独占価格の設定と,②経営革新を阻害する傾向の発生である。
2)クリントン政権における独占禁止法の運用は,1990年代の大型合併への対処という形で具体的にあらわれる。そこで重視されたのは,価格つり上げなどによる消費者への不利益の問題とともに,合併による生産コストの引き上げと,それが消費者の利益におよぶ可能性の問題であった。「92年水平的合併のガイドライン」にもとづく具体的な判断基準は,①特定の市場での集中度が著しく高まるかどうか,②合併が反競争的効果をもつかどうか,③合併後の参入が著しく困難となるかどうか,④合併が高い効率を生む場合には許可するというもの。他方,環境政策については汚染源への技術水準と成果基準の設定という伝統的アプローチに加えて,排出権取引や排出負担金の活用による汚染排出削減への内発的衝動をつくろうとする新しいアプローチが積極的につくられた。
3)これを継いだブッシュ政権は,独占禁止法の運用については,企業合併の判断基準を企業の効率性増進の側に傾け,環境政策についても,地球温暖化の抑制をめざす京都議定書合意を反故にした。いずれも大企業と社会との共存の観点から見たとき,大企業の利益保障の側に立脚点をシフトするものとなっている。資本主義の歴史が,次第に「人間らしいくらし」を重視しながら「共存」の道をさぐるものであり,その道を実際にすすむ資本主義に対して,この道は歴史への逆行となっていはしないか。
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