1)テレビ番組のビデオを使って日本の性風俗産業事情をながめる。番組の焦点はそこにはたらく女性にあてられ,彼女等を買う側の男性,彼女等を雇いはたらかせる経営者,そのような営業を「合法」とする社会のあり方には目がむいていない。したがって,論じられるのは「あなた(女性)はなぜそこではたらくのか」だけ。いくつかの事例紹介のあと,男性2人がまとめの議論を行うが,「自分の娘だったら許さない」,しかし「自分は男だから少し歳のいった風俗嬢はやはりほしい」と。そこにこの問題の現状を肯定するひとつの典型的な意見があるように見えた。「自分の身内でなければかまわないのだ」と。
2)関連して「世界の売春事情」(渡辺さん)の報告がある。途上国には児童売春や幼児売春など大人によって強制される「非自発的」な売春が多い。事実上の性奴隷。他方,オランダ,デンマーク,フランスなどでは,国ごとの相違はあるが,全体として「セックス・ワーカー」としての社会的保護,「暗部ではあるが社会の一部」としてこれを公的世界に取り込んでいく試みがある。仮に他人による強制あるいは貧しさゆえの「社会的」強制によるのでない場合,その売春をどう評価するかはむずかしい問題。障害者へのセックスの提供も最近話題になったばかり。
3)テキストを第6章へとすすめていく。内容に関連して「日本の外国人労働者」(辻中さん),「朝鮮戦争と日本」(田仲さん),「在日コリアン」(西田さん),「日本基督教団の戦争責任告白」(上野さん)などの報告がある。バブル期には中東などからの労働者が増加したが,2004年現在の「外国人登録者数」は,朝鮮・韓国籍30.8%,中国24.7%,ブラジル14.5%などとなる。労働力人口にしめる日本の外国人労働者比率は1.0%ときわめて低く,他方,日本はアメリカ国務省のレポートにより,2004年に初めて「人身売買撲滅のための最低限度のレベルを十分には満たしていない」と批判されてもいる。
4)朝鮮戦争について。48年の南北分断直後に,国連の第3回総会で韓国を唯一の合法政府とする決議が採択される。あわせて米ソ両国軍の撤退が勧告され,ソ連は48年末,アメリカは49年6月に撤退を完了したと発表。しかし,ソ連のスターリン政府の支持のもと,50年6月には北朝鮮が南に侵攻する。軍事的優位という自信もあり,また50年1月の国防長官アチソンの演説が朝鮮半島を軽視するかのように見えたこともきっかけとなったといわれる。中国の「義勇軍」も加わったのち,53年7月には休戦協定が成立するが,今日なおこの「休戦」の状態は変わっていない。この中で,日本では50年7月ポツダム政令として「警察予備隊令」がだされ,日本国内の治安維持を目的に警察予備隊が創設される。52年の講和条約発効によりポツダム政令は180日以内に失効することになるが,日本政府は52年に保安庁法を国内の根拠法として新たにつくり,これを合法化し,さらに54年には自衛隊に成長させていく。明確な再軍備である。
5)在日コリアンの同民族同士の結婚は,1955年81.44%から,60年代の81~74%,70年代の74~62%,80年代の59~31%,90年代の30%前後,2001年18%と確実に低下してきた。他方,長期定住を理由とした地方参政権の要求運動も進んでいる。すでに多くの自治体でこれを認める決議がなされ,最高裁も「定住外国人に地方参政権を与えることは憲法上禁止されていない。あとは国の立法政策に関わる事柄」であると認めている。EU域内では外国人住民の地方参政権が認められている。日本基督教団による1967年の戦争責任告白は,政府の宗教統合政策に従った組織成立と存続の経過のあやまちを認め,他方で戦争を是認し支持した罪を認め,ゆるしを請い,あやまちを繰り返さないことを表明したもの。しかし,その後,内部からも強い批判もだされ,必ずしも教団全体の合意とはならなかった。
6)テキストは「韓国軍のベトナム参戦」「ウーマン・リブとは」「在日『朝鮮人』女性運動」などを読んでいく。とりわけベトナムの独立戦争にフランスが敗れて以後,アメリカが戦争を継続していったことの理不尽,これに軍事独裁政権下の韓国が軍隊を派遣し,民間人の虐殺やレイプを行った事実,99年に韓国の時事誌『ハンギョレ21』が韓国軍の虐殺行為をはじめて報道し,そこから「加害者」としての反省がはじまること,かつての日本軍「慰安婦」も含めベトナムに対する謝罪とこの過ちを繰り返さない運動が行われたことなどに目が止まる。次回でこのテキストを終え,つづいて靖国問題の予習に入る予定。
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