最近のニュースから北朝鮮「核実験」成功の発表について。包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会によると,今回の爆発は監視対象の下限ギリギリの規模の爆発。しかし,①小規模爆弾の成功には大規模爆弾での多くの実験が必要であること,②本来瞬時に連鎖反応が起こるべきだが地震波がいくつかに分かれていたことから,これが計画どおりの実験成功とは考えづらい。本当に核実験だったかについても,なお確認が必要な状態。この問題にたいして「軍事」一辺倒で対応をするのはきわめて危険。日本も国内では年250日の日米共同演習を繰り返し,在日米軍基地(攻撃部隊)の強化をすすめている。不測の事態に至らないためにも,話し合いで平和を求める姿勢が双方に求められる。
5年ぶりの日中首脳会談は,関係修復の可能性を開いた点で評価される。とはいえ最大争点であった歴史認識については,日本側が「あいまい戦術」を継続し,中国側がこれを現時点では追求しない姿勢をとった。とはいえ会談後の中国側の記者会見は日本側に今後の「言行一致」を求めるものとなっており,オール靖国内閣の本音があらわれたときには,日本は中国だけでなく世界に対する信頼をさらに深刻に傷つけることになる。そのような事態を回避するための内外からの働きかけが必要となっている。
テキストは20~34ページを読む。対中貿易赤字の縮小に向けて,「元切り上げ」を求める声がアメリカの一部からあがっているが,これの効果は疑わしい。元高は中国からアメリカへの輸出商品価格を上昇させる役割をもつが,他方で中国は日本やASEANからの輸入部品価格の低下の恩恵をうけることにもなる。両者が互いの効果を打ち消しあうことにより,実際にはアメリカに輸出される中国製品の価格上昇は大幅なものとはならないとの見通しである。
この見通しの背後にあるのは,生産が中国国内で完結したものでなく,中国を最終的な完成品組立現場とする,東アジアの生産工程分業(ネットワーク)が出来上がっているということ。域内の部品貿易比率は,すでにEU・NAFTAより高いレベルに達している。日本を含む東アジア製品の対米・対欧競争力の高さは,このネットワークに依存しており,経済的な東アジア域内の相互依存は深い。これが「靖国派」の安倍内閣に,歴史問題を乗り越えての東アジア外交回復を求める財界からの強い力の根拠となっている。
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