「構造改革」とは何かについての前回からのつづきである。「構造改革」の全体は,①財政出動第一の景気対策から,サプライサイド(大企業への直接的支援)の経済政策への転換,②アメリカ資本への市場開放とアメリカ型経済ルールへの構造転換(規制緩和),③これらの改革をすすめるうえでの自民党主導の政治から官邸(財界)主導の政治への転換が大きな柱となっている。
90年代の財界内部に,ゼネコン関連資本から自動車・電機機械産業等への財界主流派資本の交代が起こる。それにしたがい,またゼネコン国家による財政赤字もあって,大型公共事業優先政治から全大資本奉仕への経済政策の転換衝動が強まっていく。
あわせて,90年代にはアメリカ資本による対日経済進出が強化され,その露払いとしての市場の自由化要求も強まることになる。その要求は自動車資本など国内の製造業資本にも利害のかさなるものであり,この両国資本の利害の一致にもとづき市場開放・規制緩和(改革)がすすめられる。
これらの改革が現実にすすむためには,ゼネコン関連資本の強い影響力をうけた自民党から政府の政策立案過程を切り離す必要がある。これが党主導政治から官邸主導政治の転換となる。官邸主導の実態は,経済財政諮問会議主導であり,同会議で中心的な役割を果たす日本経団連(自動車・電機)主導政治の転換ということである。
政治の世界で橋本6大改革から「世界の借金王」小渕への揺れもどしがあり,森政権をへて,再び小泉「構造改革」へという経済政策の大きな路線のブレが起こる背後には,このようなゼネコン奉仕の90年代型経済政策の転換をめぐる財界内部の対立があった。
安倍政権は小泉「構造改革」を継承するものだが,深刻な「格差社会」の形成に代表される「負の遺産」を引き継ぐところに,その大きな弱点がある。「再チャレンジ」政策は,その弱点を補うかに見せるポーズであり,実際には格差社会を流動化させはするが,格差社会の克服をめざすものとはなっていない。
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